6.外務省のロシアンスクール出は要注意
BSフジの政治関係の「プライムニュース」、東郷和彦 元外務省欧亜局長 静岡県立大学グローバル地域センター客員教授が次のような趣旨の発言があった(二月二八日)。
「日本の外務省にはロシアとの交渉の蓄積・知見がある。ロシアを表立ってこれほど非難せずに、仲介者として日本の政治家を送るべきだ。中国が仲介者になったときは日本の悲劇だ」
最初、なるほどそんな考えもあるかと思ったが、少し考えるとこれは日本を破滅へと導く危険な提案である。思い出したのは、国際連盟からの脱退を宣言し、日独伊三国同盟を結ぶ原動力となった松岡洋右外相、そして、ナチスとヒトラーに心酔した大島 浩ドイツ大使。彼らは日本の針路を過たせ、日本を破滅に導いた。
日本がG7の中で中立的な立場をとったとしたら、どうなってしまっただろうか? そして、ロシアに対する知識の蓄積があるから日本外交は有能だという認識は、国民感情と大きく離れ、それだけではなく客観的な視点からも現実離れしているのではないだろうか? たとえば元島民には気の毒だが、プーチン政権で北方領土返還などありえない。幻想を見ようとする専門家、政治家、経産省を含めた官僚には要注意だ。
故岡崎久彦氏(外務省情報調査局長)のような全体像を深く見ることのできる人こそ必要だ。
7.仲介者は誰か
ウクライナとロシアとの交渉の仲介者には、中国、インド、イスラエルなどがあげられている。ウクライナは中国とイスラエルに頼んだようだが、中国は火中の栗を拾うだろうか? そして中国が仲介者になったならば、日本には悲劇だというが、本当にそうだろうか? 一時のパックス・シーナが成立したならば、それはそれでいいのではなかろうか。平和の使者となった中国にとって台湾に侵攻するような行為は、いっそう敷居が高くなるだろう。
8.プーチンは狂人ではないのか?
やはり外務省ロシアンスクール出の作家・元外務省主任分析官の佐藤優さんは「この戦争は許されないが、プーチンは正気でこの行為は理屈にあっている」という趣旨の文章を発表している(『プーチンの精神状態は異常』という報道は、西側が情報戦で負けている証拠である 三月七日 President 0n line)。
果たしてそういえるのだろうか?
この考えは危険だ。ヒトラーの行為やスペインによる中南米の先住民の虐殺に免罪符を与える可能性がある。
ロシアの行為を日本に置き換えてみれば、大日本帝国復活のために、為政者が突然軍を北方領土あるいは朝鮮半島に侵入させたに等しい。それは狂気そのものだろう。
プーチンのせいで、日々、子供を含めて一般人が何人も殺されている。今後、何十万人、何百万人の命が奪われ可能性さえある。プーチンは邪悪な戦争犯罪人であり、狂人である。
9・プーチンの恐るべき目的
プーチンの目的はあれこれ取りざたされている。あまり言及されていないが、ロシア兵の被害が大きくなればなるほどその目的は恐るべきものになるかもしれない。すでに二〇〇万人を超える人々が難民となって国を脱出している。そのあと各都市で殲滅(ジェノサイド)が始まるだろう。プーチンがソ連邦とロシアの栄光を求めて始めるのは、何か?
強制移住である。
一九三〇年~五二年にかけてスターリンは六〇〇万人の民族を主にシベリアと中央アジアに強制移住させている。それらは、クラーク(自営農民)、コサック、ドイツ人、ポーランド人、クルド人、ユダヤ人、ウクライナ人、ギリシア人、エストニア人、ラトビア人、リトアニア人、クリミア人、タタール人、朝鮮人、中国人、日本人と枚挙にいとまがない。もちろん移動の前後で多数の人々が死んだのである。
ハリコフ、マリウポリ、キエフ、オデッサなどで戦闘員、志願兵を殲滅した後に、廃墟に経済的に疲弊したロシア人を送るつもりだろう。ロシア人の血で贖われた土地を戻すわけがない。
3月10日記