プーチンの最後 ーウクライナ戦争はすべてを炙り出すー(3)

10.旧ソ連時代パルチザン戦争でソ連共産党員は次々と殺害された

 ロシアの工作員ウクライナ南部のメリトポリ、ドニプロルドネの市長を拉致し、傀儡の市長に頭をすげ替えるという稚拙な企てを行っている。ロシア側は今後手痛い仕返しを受けるだろう。プーチンは歴史を学んでいない。

旧ソ連時代、スターリンはドイツ側についたウクライナ西部の何万人という市民を復讐のためにシベリアに移住させた。ソ連は代わりにロシア人を送り込んだ。どうなったのだろうか?

 

「西ウクライナ全域でソヴィエトのやつらに対する、本物のパルチザン戦争が始まった。何十、何百というグループが、ソヴィエトの役人、兵士、将校を待ち伏せした。東ウクライナとロシアから派遣されてくる共産党の専従職員が頻繁に殺された。そして、これに言及しないわけにはいかないのだが、ロシア語と共産主義教育のためにロシアとソヴィエト・ウクライナから農村部に派遣された若い教師たちも殺された。この戦争は一九六〇年代の初めまで続き、犠牲者は双方とも数万人にのぼった」(『ウクライナ日記 国民的作家が綴った祖国激動の155日』(アンドレイ・クルコフ 集英社)。

 今回のパルチザン戦争は、ウクライナほぼ全域で行われることになる。

 

11.JICAは態度を鮮明にせよ

 ウクライナは遠い世界ではない。日本の税金二〇〇億円弱(借款)がキエフのボリスポリ国際空港の拡張工事に使われている。日本のコンサルタンツが設計し、トルコ企業三社が受注して建設したものである。ロシアの空挺部隊により、占拠されたようだが、それに対してJICAは早々ホームページで態度を鮮明にすべきだろう。これは我々の税金が入れられているのだ。イラク戦争のときも日本が建設した学校や病院が破壊されている。

 

12.日本が自衛隊の装備品を供与すことに賛成する

 日本は、防弾チョッキ、防弾ヘルメット、非常用食料、防寒服、テント、発電機、カメラ、衛生用品など殺傷能力が自衛隊の装備品をウクライナに供与するという。私は途上国へのテロ対策支援に係わっているが、ロシアによる国家テロに対して法律の範囲内でできるだけの支援をすべきだと考える。それは日本の憲法の精神に合致するものだ。岸防衛大臣の「ウクライナの国民を最大限支援するとともに、国際社会と連携・結束し、国際秩序を保守するとのわが国の方針を明確に示すものだ」という表明に賛成する。

13. 核の共有には反対する

 この危機にあって岸田総理であったことは行幸だったかもしれない。

 火事場泥棒のように、何人かの政治家やある政党が「核の共有」を推し進めようとすることには、反対だ。

 核を共有しても主権は核保有国にある。しかも今回ロシアによりウクライナ原発が攻撃され、人質になっていることを考慮するとマイナス面も多い。

 さらに日本は歴史が長い国ではあるが、今の日本の出自はどこにあるかというと、敗戦後の平和主義、つまり本文でも書いたように「破壊ではなく再建を、紛争ではなく友和」に行きつく。

 その国是を捨てるということだろうか? 

 日本の国際的信用は失墜する。日本人が思っている以上に日本の影響は大きく、世界にモラルハザードを引き起こすことだろう。

 私はこんなときだからこそ、日本国憲法を持っていることを誇りに思う。今こそ九条一項の精神に立ち戻り、かつそれをロシアと国際社会に訴えるべきだろう。

「正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」

 

14.核使用はあるか? キューバ危機とは似て非なるものだ

 プーチンウクライナ情勢はロシアにとってのキューバ危機だといっている。けれども、キューバ危機のときは、すでにキューバに核が配備されていたのである。ウクライナは核を廃棄したのである。真逆だ。また、政治のメインアクターが大きく違う。

当時、カストロ(三二歳)、フルシチョフ(六八歳)、ジョン・F・ケネディ(四五歳)。

 

 カストロキューバ人玉砕を覚悟して、フルシチョフアメリカ本土への先制核攻撃を依頼している。第二次世界大戦でクライナ共産党の責任者としてナチスと戦ったフルシチョフは、カストロの助言に従えばどうなるかを考えて、身震いした。キューバは破滅し、世界規模の核戦争が始まる。

 

 一方、ケネディペンタゴンアメリカ国防総省)の指揮官らから核の使用を求められていた。ところがケネディ第二次世界大戦時、哨戒魚雷艇駆逐艦PT一〇九の艦長。ソロモン諸島沖で日本海軍の駆逐艦天霧」に母艦をまっぷたつに引き裂かれ、ほうほうのていで生き残った経験があった。彼は「全面戦争」とか「総力戦」といった抽象的な言葉を軽蔑し、「ここで起きている戦争」は汚いビジネスだと述べている。

 

 結局、フルシチョフケネディは書簡の交換、水面下の交渉などにより、キューバからの核ミサイルの撤去、キューバ保全、トルコにあるアメリカの核ミサイルの撤去(秘密交渉)で妥協し、核戦争を回避した。

 

 今回のメインアクターは、ゼレンスキー(四四歳)、プーチン(六九歳)、バイデン(七九歳)、NATO諸国、誰一人戦場を直接経験している人はいない。

今の時代も参考になるキューバ危機は、「北朝鮮危機を前にトランプ大統領に読ませたい珠玉の一冊」として、『核時間 零時1分前 キューバ危機13日間のカウントダウン』(NHK 出版)を紹介しているので、是非目を通してほしい。

 

 続く

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渋谷ハチ公前 2月25日 ウクライナ支援