グローバルサウスを実践するー世界を潜入取材する

投資先として勧めるのは今も昔もチェンナイ

 

生活環境比較の結果

 12項目を評価したところ、マドラス+6、ボンベイが+5、バンガロール+4,ハイデラバード-1、カルカッタ-3であった。ハイデラバードは意外かもしれないがもうひとつ特色がなく、地理的にデッドロック都市でることから評価は低かった。ボンベイは治安と住宅費の高騰が問題となった。マドラスは暑さと邦人子女教育(補習校のみ)を除けばポイントがよかった。むろん、各項目に何を重視するかでウェイトをかければ結果は違ってくる。たとえば、気候に重点をおけばバンガロールの点数はもっと上がるだろう。

 

投資先優先度

 投資先としても顧客に勧めたのは、マドラスだった。経営上の財務分析や需要予測は一位とはいかない。短期的に大きなビジネスに結びつく都市ではない。しかしながら、バンガロールボンベイに比べると物価も安く、都市問題も少なく、人材も豊富であった。長期の投資を考えると、駐在員が安心して住める、競争がまだ激しくはない、人が信じられる― ここでまず成功をして他の州へも投資するのが最適である。

 どこまで調査団のレポートを重視したかはわからないが、実際に顧客はマドラスに投資をしたのである。そして、今は主要都市で事業を展開している。

 

 

鈴木マルチの成功について

 この項を書くのに書店や図書館でインド関連の書籍を探したが、実に少なくて驚いた。グローバルサウスの雄などと呼ばれているが、私は掛け声倒れに終わるのではないかと危惧している。

 

 最近、企業への顧問関係の仕事で、企業が進出する上で、イスラムや他の地域での禁忌事項=やってはいけない、ことなどを教えられないかという問い合わせがあった。郷に入っては郷に従えということだろう。

 日々の暮らしならばそれでいいだろうが、仕事や交渉では郷に従っていたならば目的は果たせない。ある部分では強く主張し、我流を押し通す必要がある。

 その見本がインドで成功し続けているスズキであった。

 インドの宿痾はカーストとジェーティである。スズキは会社内においてはそれをとっぱらった。バラモンなど階級上位の幹部は個室を持つ、制服も特注、食堂は別、それが普通と要求するが、鈴木は認めなかった。日本以上に万人いっしょである。あれこれいう幹部には「日本式にやらなければ、生産性が落ちる」、「もしインド人がいやだというなら日本に帰る」としてがんとして譲らなかったのである。それは社長鈴木修のカリスマあってこそできることかもしれない。そのような自信がない企業はインドに進出すべきではないだろう。 

 むろん、車じたいは、悪路のインドにそう車体とし、低価格、低燃費かつ故障も少ないものとした。私がインドを回っていたころは「ヒンドゥスタン・モーターズ」の「アンバサダー」がまだずいぶん走っていたが、設計が1950年代と古いこともあって燃費が悪く、故障も多く、スズキマルチに駆逐されていくのである。

 なお、最近のインドの大気汚染はますますひどい。北部の都市は以前のカルカッタ化している。デリーは外に出ると気管支の病気になる。学校は閉鎖、飛行機の離着陸もスモッグで難しい。PM2.5の数値が、世界保健機関(WHO)の定める安全水準の77倍以上になった。原因は車の排気ガス、野焼きなどであろう。

 

 インドは人口ボーナスですごいなどとマスコミは幸いでいたが逆である。大都市の過密は人が住む場所ではないことを示している。こんな場所には駐在などできるわけがない。ビジネスには適していない。すべがネットで解決するわけではない。外に出る必要がある。外に行けば気管支や肺の病気が必定。この状況はパキスタンのラホールも同じである。

 したがって、株式に投資するのはともかく、企業の進出についてはインドの北部の都市は不可である。今の時代もますますインド南部、チェンナイを勧める。とはいえ、大気済んでいるわけではなく、まだずっとましということである

(続く 新婚旅行でジプシーを警察に突き出す

 

 

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