世界温泉合戦2
今回は出張中に訪れた温泉が2軒、駐在中に何度か訪れた温泉が2軒である。さあ、栄えある一位はどこだ?

1.第6位 チリ Chillanのスキー場・保養温泉
1993年~94年にかけて二度チリの環境を調査した。当時はまだ政府にもお金があり、環境庁関係の補助金を得たのである。そのとき、北から南までマイクロバスで縦断した。調査団は駐在中のJICAの専門家を含め5人だった。
88年に訪れたときは、まだ独裁ピノチェット政権下で、サンチャゴでは憲兵隊に真夜中に自動小銃をつきつけられるなど何度か怖い目にあった。今回はせいぜいチリのサッカー場をでたときに、ファンたちとともに、催涙ガスを警察の特殊車両からかけられただけだった。
小銃に囲まれし日々いまはなく民主の光燦燦と降れ
その時は思いがけなくもアンデスを滑降する機会に恵まれた。私は北海道出身なので幼少からスキーに親しんでいて、昔取った杵柄でスイスイと滑ることができた。蔵王を数年前に滑ったのを思い出した。
その後足腰が痛くなって温泉に浸かる。でも露天風呂ではなく、室内の温泉、それも家庭にあるようなタブに浸かるだけである。風流も何もない。
スキー場がそばにあるという立地の良さから最下位は免れた。またこの街は美人の多い街であることを言い添えておこう。
2.第4位 ベネズエラ トリンチェーラ

2008年~13年にかけてベネズエラの二つの近所にあるプラントプロジェクトのためにバレンシアで生活した。行きかえりの途上の山間に温泉があった。仕事帰りに風呂浴びるような感覚で同僚とともに10回以上は訪れたであろう。周囲に宿やレストランがあり、風呂上りには、ビールを飲んでアソパード(海産物のスープ)を注文するという楽しみができた。
温度の違う広い湯船(プール)が二つ、肌のためとうたう泥の温泉がひとつ、アロマセラピーを使ったマッサージもある。また、硫黄分の含んだ気体を身体に吹きかけるための機会があり、なかにはそれを吸っている人が… 本当に身体にいいのだろうか? とはいえここには 19世紀初頭に探検家アレクサンダー・フォン・フンボルトが研究のために訪れた由緒のある温泉である。
お湯はかなり熱く、私もプールの中ほどまでは行く気にならない。仕事仲間のベネズエラ人は、温泉は初めてだからか、あっという間に気分が悪くなった。
土曜などにいくと、超満員で、昼に入ったときは藻とともにお湯がぬるぬると薄気味悪く、太陽光線は強く、なにやら眩暈がしてきた。
夜、それはそれは幻想的なのだ。ちょうど満月。人はさすがに疎ら。お湯はぬるぬるせずに、暗いので薄汚さも気にならない。時々、温泉から少し離れてある、高速道路を走る大型トラックの音が響く。お湯は熱く、仕事で疲れた体から、ゆっくりと何かが抜けていく。
早朝もいい。とまっている宿から10分ほど歩いて、温泉に行く。朝の8時。泥風呂の周りには、放し飼いにされた猿が、客が残した食い物をつつきにくる。
この温泉は一位でもおかしくないのだが、設備が整い過ぎているし湯舟がプールなので、野趣が少なく後塵を拝した。
第一位 ベネズエラ モーゼの泉

ベネズエラのスクレ州にある比較的新しい温泉である。正確にいうと冷泉といってもいいかもしれない。さほど熱くはない新しい温泉である。公開されたのは1990年代。もともと土地所有者は牧場にする予定だった。ところが喉を乾かせた馬たちが地面から湧き出る水を飲んでいることに気が付いた。それが温泉の始まりである。私が訪れたのは、2014年~16年にかけてのこと。
この温泉はいくつも泉があり、どれもこれもこの世のものとは思われないほどの美しさである。またここの泥は美肌効果があるというので、女性に人気である。皮膚に良い薬用成分の硫黄、ケイ素、マグネシウム・カリウムが入っているという。

さらに泉の横には(カチャマ)と呼ばれる魚といっしょに泳げる池がある。魚は白身で美味だ。
ただ私の住んでいたアンソアテギ州のレチェリアからは180キロほどで運がよければ3時間前後で到着する。けれども始終、抗議デモの道路封鎖や道路陥没、自動車事故などもろもろあり、へたをすると10時間近くかかることがある。温度もやや低い。それらマイナス要因を考慮しても、風景の美しさは出色なので、一位とした。
なお、モーゼの泉が公開される前の1979年に、大自然の美しさから海洋探検家のジャック=イヴ・クストー(Jacques-Yves Cousteau)が訪れている。以前は研究家などが訪れることができるほど、ベネズエラは平和で安全だったということである。
第7位 フィリピンの韓国温泉
2018年の夏に訪れたのが韓国人経営の88 Hotspring Resortである。当時、途上国に対する対テロ対策援助で、フィリピン警察に防弾ヘルメット、防爆服、防弾着などの無償援助に関わっていた。30年ぶりに訪れたフィリピンは以前の最悪(ベネズエラと同じ)と比べて安全で警察も信頼に値した。大統領は欧米のマスコミを中心に非難されていたドゥエルテ大統領である。彼の功績は偉大だった。今となっては、私やフィリピンの友人すべてが危惧したように治安が悪化し、日本人のラーメン屋や旅行者が被害にあうようになってしまった。残念だ。
その日マニラで会議を持った私と同僚は、午後に時間があまったので、適当に地図を見て温泉を探り当てたのである。
地名は、ラグナ州のロスバニョス(Los Baños)。スペイン語でトイレ、風呂、温泉などの意味である。その近くにはCarambaという地名も。これもスペイン語で、驚いたという意味である。
しかしこれらの意味は今は英語圏となっているフィリピン人にはわからないのである。
さて、温泉はプール温泉でもうひとつ趣がない。韓国人の団体客が食堂ではカラオケを大合唱している。マニラから近いのでひと風呂浴びるという意味では、お手軽な温泉ではある。

さらに、ここから足を延ばすと、タガイタイという高度の高い山間の町があり、避暑地となっている。風光明媚なので訪れる価値がある。途上、ベッサメムーチョなどメキシコ音楽を楽しめるレストランもある。