単身赴任で熱帯病1

 バレンシアの唯一いいところは、気候の変動が少ないことである。ほぼいつも暑い。暑いといっても、日本のように蒸し暑いわけではないので、過ごしやすい。
 急激に温度が下がるようなことがないので、風邪もひかない。

 ぼくは一年間、ほぼ無病ですごした。

ところが、ぼくの運転手のわけのわからない病気がうつったのである。彼は数日前からせきをしていた。苦しそうだった。そして、先先週木曜日10月22日に一度会社にきたが、午前中に退社し、そのまま入院してしまった。

その日、仕事でいくつか官庁を回り、午後にオフィスにもどると、

だるい、喉が痛い、胸と背中が痛い、せきがでる。

オフィスの医者に体温を測ってもらうと、38.5度ある。

ベネズエラ人は37度〜37.5度ぐらいが平熱だけど、日本人は36.5度前後、だからかなりの高熱ですよ」

医者は日本人とベネズエラ人の平均体温の違いについては知らなかった。クーラーをかけていると、ベネズエラ人が暑いと感じるとき、日本人には少し寒いのである。

ぼくもその日は夕方に帰宅し、そのまま眠りについた。眠り前に体温を測ると39度を超えていた。

翌日、午前中から医者へいった。何かにかまれて腕がはれてから一年半ぶりである。緊急病棟である。あのときと同様に寒い。

病棟には中年の男ひとり、そして女性二人がベッドにねころがっている。

看護婦だか医者だか分からない中年のおばさんにまず血をとられた。机の上には書類が乱雑に置かれ、彼女は気があれこれちっている。
血を書類にぶちまけたのである。
 あわてて書類をふく。ふくとどこかへいく。
そのうち男の医者がきて問診表をまた作っている。
 
その後、どこかへいってしまう。
ぼくはまっているようにいわれて待つ。待つといって、医者をまつのか何を待つのかさっぱり分からないのである。
 ともかく寒い。熱が39度前後あるのである。
 待つ、待つ、しかし何を?