2009-01-01から1年間の記事一覧

単身赴任で熱帯病になる6

けれども世はぼくを見捨てなかった。 すたすたすた、という軽い足が聞こえてくる。ふとっちょの多いこの国において、これは長身の人間、それだけで知性を感じるーを意味する。 そう、ついに、現れたのである。なにがって医者が。かつては美しかった痕跡を残…

 単身赴任で熱帯病になる5

ぼくはそのうち、疲労からうとうとしたようだ。 気づくと隣に研修医がきている。「点滴をやるよ。もう少ししたら、医者もくるし」 というわけで、やっと点滴のチューブと注射がつながった。ひんやりとする液体が体内に流れていくのがわかる。 時計をみると、…

単身赴任で熱帯病になる 4

VIAとは道、つなぐなどの意味である。つまり、この状況では、体と器具をつなぐためのものをつける、つまり注射針を腕にさすのだ。そして、点滴をするということだ。 突然だが、受験生諸君、あるいは英語や外国語を学ぶビジネスマン! 単語はそれとなく基本の…

単身赴任で熱帯病になる 3

食事をしてしばらくしてから、研修医の一人に連れられて、レントゲン室を訪れ、数枚胸の写真をとられた。 一瞬、被爆が気になる。たしか直接レントゲンの場合は、予防行為ががんの原因になるのでやめたほうがいい、と『患者よ、癌と闘うな』の著者慶応義塾大…

単身赴任で熱帯病 2

いつのまにか、若い二人の男がきている。 研修医だろう。 「お医者さんはいつくるの?」 「そのうちくるよ」 腕時計を見ると、もう12時を過ぎている。 「ごはんを食べに出たいんだけど」 「昼ごはんは出るよ。じゃあ、ちょっと治療をしようか」 ぼくは機器の…

 単身赴任で熱帯病1

バレンシアの唯一いいところは、気候の変動が少ないことである。ほぼいつも暑い。暑いといっても、日本のように蒸し暑いわけではないので、過ごしやすい。 急激に温度が下がるようなことがないので、風邪もひかない。 ぼくは一年間、ほぼ無病ですごした。と…

コロンビアで新自由主義と、日本とベネズエラを考える

ボゴタを経由して、ラテンアメリカの一大観光地といえるカルタへーナ・デ・インディアに昼についた。一見、小リオ・デ・ジャネイロである。 20年も前に、南米、陸路一周をしたときは、コロンビアだけは訪れなかった。あまりにも危険だったからである。 メデ…

ベネズエラの中の日本人(2)

ベネズエラ全土で日系人は13家族だって、大使館の人がいってましたよ」 そういっていたのはIreneではなかったか。 彼女はぼくの秘書候補として、面接に来たひとりだった。 ぼくの担当の仕事の経験はなかったが、この程度の仕事ならば十分にこさせそうに思え…

ベネズエラの中の日本人(1)

「チーノ!」 ベネズエラでは日本人はこう呼ばれる。中米の田舎あたりだと、こう呼ばれることも多いかもしれない。ベネズエラのバレンシアあたりでは、20年ほど前ならば、日本人が歩いていると、「チーノ!」といって子供たちに石を投げられることもあった。…

ベネズエラに住み、働くということ  

世銀の調査では、ベネズエラのビジネス環境は世界190位前後だった。 中南米では最低である。 カラカスに着くと、石油のお金で潤っているので、街は高層ビルも多く、先進国のようにも見える。だが少し住めば この国は、まったくの偽装近代国家であることが…

 黒魔術3

エクアドルを訪れたときのこと。 目的は実測上世界一背の高いマングローブ林の保全。ぼくの任務はそれに伴う地域開発のプロジェクトを立てるための現地調査だった。 漁村から漁村、カヤーパス族などが住む先住民部落から部落、アマゾン川の支流をモーター付…

黒魔術2

黒魔術は利く。 理由がある。 鈴木一郎氏の「ブラジルの黒人密教」によると、カンドンブレ、ウンバンダ、などのアフリカ系宗教の教団における、マクンバのかけ方は以下のような手続きを踏むという。 1.教団に黒魔術をかけたい人間が誰か、なぜなのかその理…

黒魔術1

最初にぼくがマクンバ(黒魔術)とであったのはブラジル、リオ・デ・ジャネイロであった。 ぼくはブラジルのバイア サルバドールの旧市街で一時、家出少女といっしょに日々を過ごしていたのだが、ある夜泥酔した翌日に盗難に遇い、パスポートも金も奪われた…

豚インフルエンザと黒魔術

3月〜4月にかけて異常に多忙であった。現在の本職が忙しいだけではなく、現在発売中の『新潮45』5月号に掲載の「光が消えた日 中途失明という絶望との闘い」 のゲラを確認し、マイアミ経由で日本に短期一時帰国し、日本の桜を見て、ベネズエラへとんぼ…

街中に鳴り響く 銃声の祭り

メリダのつづれ折を車で上っていくと、「Año Viejo(行く年)」と子供たちが声をかけてくる。道路の左右に立ち、紐でとうせんぼうをしている。 家の玄関先には、手作りの人形を置かれている。 小遣いかせぎである。でも、ずいぶん詩的なこづかいかせぎなのだ…

交通事故し放題のベネズエラの何もないカーニバル

ベネズエラのカーニバルについて書こうと思っていたが、予想とおり何も無い。 カーニバルのカの字もない。 そもそもぼくたちはカーニバル期間中働いたのだ。しかもきちんとベネズエラ人も来るのである。 あまりの非常識! 他の中南米では考えられない。 たと…

日本、ベネズエラ 危機に瀕する民主主義

選挙結果は日本でも報道されたと思うが、賛成SI 54.36%、反対NOが45.63%でチャベスの勝ち、次の選挙にもチャベスは立候補できるので、選挙資金と活動する人の面で圧倒的に有利な与党、を考慮すると終身大統領への道を開いたといえる。 さて、な…

投票

朝、投票所にいってみると、ずいぶんとビラがまかれていた。チャベス大統領の写真をはってあるものものもあるので、チャビスタのものかと思ったがそうではなかった。すべて、NO! さらに、建国の父、ボリバルの1819年の言葉がひかれている 「権力に同一人物…

憲法改正選挙

日本では、議論はあれども憲法改正の国民投票など行われたためしがない。その意味ではベネズエラのほうが民主的なのだろうか、と疑念をもってしまう。だが議題は大統領の再選を無制限に許すかどうかに集約されるのだから、民主的というのは、はなはな疑問だ…

民主政治下での独裁

まるでこれは、ジョージオーウェルの『1984年』の世界である。あるいはやはり、オーウェルが滞在し、ぼくもよく訪れたミャンマーの現在の軍事政権である。独裁は敵を無理にも作り出し、そして国内ではあらゆることが可能なのだ。 ぼくは昨日うっかりニュース…

 誘拐される

Alberto Leonは夜の8時の薬局から出て、自分の軽自動車に乗ろうとしたときだった。 ごつんと後部にあたるものがある。 「入れ」 銃口である。いわれたまま、運転席に入る。見ると二人の若者である。一人は10台後半、もう一人は21、2才だろう。「あけろ…

闘牛士のように舞い、犯罪者を撃退!

今回は黒魔術について書くつもりだったが、たまたまぼくのアシスタントが3時間ほど誘拐されたので、またまた犯罪について書く。 ベネズエラの死因の一位は、交通事故、次が犯罪だといわれている。殺人率はチャベス政権以来うなぎのぼりで、今は40を超え、…

美人と移民とそして国家

美というのは残酷だ。生まれながらのものである。もちろん、時代や場所により何が美であるかという定義、集団幻想、民族の意識には違いがあるものの、美人といった場合、ある程度、普遍的な美というものがあるような気がする。 ベネズエラはミスユニバース大…

カリブを潜る2 ああ、溺れる!

さて、さて、このカリブの島々はどれほど美しいのだろうか。 これまで、3つほどの島にいった。島によって特徴がある。魚も違う。大きさも色も。同じなのは10月から11月にかけて、午前中は蚊が多くてまいるということ。「かい、かい、かい」 いっしょに行っ…

カリブを潜る1

自宅から1時間車で行くと Tucacasという観光地がある。Parque Naciona Morrocoy(国立公園)の中にある拠点である。カリブ海。そこのいくつかの船着場から、カリブ海の島々へと行ける。 一帯は広大なマングローブ地帯である。 マングローブとは不思議な生き物…