原発は田舎による都会の搾取だった

 以前、双葉町若い女性が「被災地に募金をください」といわれ、「わたしも被災者だ」と答えたところ、出身地を聞かれ、「あなたは被災者でない」と言われたそうである。
 20代の女性にはまったく罪はない。
 けれども、地元の歴史を知っておいたほうがいい。これまで原発については地元では禁句で、若い人はどのように原発が誘致され、途中浜通りでも激しい反対運動が繰り広げられたことはたぶん知らない。
 大人が後ろめたくて語らないからである。
 そこで、原発頼りの地元がいまも多数あるので、この際、浜通りの過去を振り返ってみたい。

 1960年代、原発がまさに初めて推進されようというとき、浜通り東海村は沸きに沸いたのだ。洗脳されやすい日本人は、みな原発大好きになっていたのである。

 全国津々浦々で行われたアメリカによる原子力博覧会により、都会には電気を、地元には金と職をもたらす。どこでももろ手をあげて大歓迎だったのである。だからそのときのことは責めるわけにはいかない。問題はそのあとなのだが…
 
以下、「愛! フクシマの黙示録第4話 すごい人は本当はひどい人だった」より 

                                                                                                                                                                                                                • -

原発大好き ソング

 電力さんがきてくれた
 びっくりアトムのプレゼント
 こんな幸せ、またとない
 アトム景気に乗り遅れちゃ
 ご先祖さんに申し訳ねぇ
 えらいこっちゃ、えらいこっちゃ
 仕事、お金、お金に仕事
 はや、つかめ はや つかめ!


 放射能は身体にいい
 コバルト風呂はいい気持ち
 まるでおらが町、東京さ
 喫茶店、スナック、カラオケ
 うれしいね うれしいね 
 イイ男まできちまった
 あ、それ、それ、
 新国道には、ラブホテル
 えらいこっちゃ、えらいこっちゃ
 はよ、つかめ、はよ、つかめ
 電力さんのイイ男


 おこぼれ ちょうだい
 電力さん
 さすれば、事故も早漏らし
 見ざる、聞かざる、言わざる で
 すべて内密、闇の中
 あっ、それ、おこぼれ
 おこぼれ、ちょうだい
 電力さん
 プルト君のカクテル最高だぁあああ!


★発展する地元
 大熊町とその周辺の建設業者は沸き立った。零細業者20数社が共同体を作り、東電事務所、職員住宅、ウラン運搬路の建設を受注した。共同体に雇われた地元農家も喜んだ。
 もう、わざわざ東京にまで出稼ぎに行かなくてよい。
 日当は男1000円、女500円。家から職場に通えるので多少は金が残った。ラーメン一杯が60円の時代である。
 新国道から発電所入口にかけて、バー、パチンコ屋、ラブホテル、ガソリンスタンド、貸蒲団屋が進出した。地価はあっという間に3倍の坪2250円に上昇した。電話加入者も激増し、東電事務所の通話が増え、長距離通話を申し込んでも混雑のため交換手がなかなか対応できない状況だった。
 風紀が乱れ、派出所ではなく、地域を管轄する富岡署のパトカーが巡回した。しかしこれは原発にかかわらず大規模インフラを過疎地に建設するときに世界で起こる出来事である。
 県の委託で財団法人日本経済研究所が経済調査を行った。同調査は、原発誘致の地元への波及効果を次のように述べている。
1.固定資産税:一号炉が2億8千万円、2−4号炉が完成すると、14〜15億円の固定資  産税が入る。
2.雇用増加は、1号炉だけで100人〜200人程度。4号炉までで400人の職員、技術職が必要となる。建設期間中(9年間)は延べ平均500人の土木労働者が稼働する。この職には地元の高卒が作業員として雇用される。地元の消費は増加する。
3.人口増、税金増に伴って、病院や社会福祉施設も充実する。
4.石油産業と比べると、石油精製所、石油化学、鉄工所などが集積するコンビナートのような状況が現出する可能性はいまのところない。原始力発電は、ウランは海外の鉱山、発電は発電会社、それに伴う機械などは大企業が請け負う。地元の経済波及効果には限度がある。現在使用済燃料はアメリカに返送しているので、地元が使用済燃料再処理工場を誘致すると、それが関連産業となる。
 
 さて、最初に裕福になったのは、固定資産税が入ってきた大熊町。8000人に満たない人口なのだから、単純計算で14億円の税金収入があれば、一人あたり分配金は17万5千円以上となる。大卒の初任給が6万円弱の時代。隣の双葉町には羨望の的。早く、早く、おらが町にも原発が欲しい。
 双葉町の田中清太郎町長はとっても正直である。                                                              
「隣町の大熊町に於きましては、一人当たり分配所得が県下1位と云うことであり、発電所建設にともなう経済的波及効果は逐次浸透しつつあるように思われますが、実際的には当双葉町を始めとする地域内各町村には未だ大きな影響はみられず、地域全体としては経済面に於いて後進性から脱却出来得ない状況であります(1973年(昭和48年) 原子力発電第一回公聴会 福島県農業共済会館)」

 ところが、時置かずして、双葉町も裕福になる。双葉町に立地する5号機(着工1971年、運転開始1978年)、6号機(着工1973年、運転開始1979年)が完成・稼働し、固定資産税が入り、雇用も一層促進されたからである。
 それだけではない。再処理工場を誘致せずとも、お金が入る仕組みの電源3法を田中角栄総理大臣が作ってくれた。時、1974年、オイルショック。石油の代替として主役の座を射止めたのは原子力発電。法律という名前で、国民から電気代の一部として有無を言わさずに金を詐取するものであった。田中は地元新潟で訴えた。
東京に作れない電気を送り、どんどん東京から金を巻き上げるんだ
 田中の考えは田舎による都会の搾取であった。
 電源3法は、天下りの役人の給与、地元への買収資金、「原発はクリーンで安全で安い」という広報資金、無駄な高速増殖炉の開発など、国民の金を悪戯に浪費するためのものであった。これらの浪費は廃炉のコスト同様、原発のコスト計算には入れられていない。
(続く)

                                                                                                                                                                                                            • -

★現在避難している人々は、きっと地元のことを考えるのはつらいだろう。むしろ、他の原発誘致をしている地域の人々に読んでもらいたい。あと、都会の日本人にも。

★税金も同じですが、多くの人間から広く、数百円をよけいに徴収するのが国・電力のやり方です。すると、普段は気にもならないわけです。

プルト君が飯館村で見つかったようですが、今頃何をいわんかです。3号機は核反応をともなう爆発で、使用済み燃料は大空へと飛び散ったのですから。

★「愛! フクシマの黙示録」第4話まで発刊されました。「どこでも読書」が早いようです。携帯は「BestHit books」で販売されています。おかげさまで、恋愛、ハードボイルのジャンルでは、盛況です。

★涼しくなり、風邪をひいたようです。サッカーボールをけり、頭がぷつんといったので、MRIをとってみました。ガタンゴトンと煩く、でも気持ちよくずっと眠ってしまいました。なにごとも健康一番ですね。