プーチンの最後 ーウクライナ戦争はすべてを炙り出すー(4)

15.マスコミは田中龍作さんから話を聞いてはいかがだろうか

 先日、BSTBSの「報道1930」を見ていて驚いた。キャスターが「日本人ジャーナリストはキエフに残っていない」というのである。それは事実ではない。あるいは唯一キエフに残る田中龍作さんは日本人ではないというのか? 彼はインデペンデントなジャーナリストで、寄付により活動している。

 想像するに本当のことをいうジャーナリストなのでマスコミからは嫌われ、忌避されているのだろう。一方、彼自身大マスコミが嫌いなようだ。

 

 現在キエフに関するほとんどの報道は、恥ずかしいことに、海外のマスコミによる二次情報、あるいは現地の人からの映像に占められている。日本人の視点から見たキエフの報道は、彼しかできない。

 田中さんの報道のやり方や立ち位置は私の考えとは大きく違う。しかし彼は命を賭して伝えようとしているのである。

 

16.トランプだったらむしろもっと酷いことに

 バイデン政権の弱腰な外交政策を見て、トランプ大統領だったならば、この戦争は起こらなかったとアメリカや日本でも考えている専門家や一般の人々がたくさんいる。だが、それは危険な考えだ。トランプはもともと反ウクライナであり、ロシア側に立っている。バイデンの息子のウクライナ汚職疑惑もあり、大統領のときにゼレンスキーとは面会を拒否しているし、ウクライナ軍事支援二億ドル以上も一時凍結している(東京新聞 三月四日「本音のコラム」北丸雄二)。

 北村さんはワシントンポスト紙を参考にしたようだが、同紙三月七日によればトランプは「米軍機に中国国旗をつけて、ロシアを爆撃すればよい。そうすればアメリカはロシアvs中国の戦いを高見の見物だ」と発言している。冗談だろうが、トランプの元に西側諸国が結集するとは思いえない。

 

17.経済制裁は効く

 ロシア人は制裁慣れしているから、我慢し続けるとロシアの一部専門家がいっている。本当にそうだろうか? 一部年配の人はそうかもしれない。年金受給年齢が引き上げられても我慢するのかもしれない。初期の段階では、戦時ムードで反米・反NATOナショナリズムが高まるかもしれない。しかし時代は大きく変わった。グローバリズムにより全く違う国民がいる。

 

 私は駐在地のベネズエラで国の経済が自己崩壊するのを経験している。あっという間に通貨は紙切れになり、インフレが一〇〇〇%、一〇〇〇〇%となる。食糧、医薬品を探して長い行列を作る。あるいは、闇でそれらを高値で購入するために町中を探し回らなくてはならない。あちらこちらで商品の略奪が頻発する。企業は次々と倒産する。給与は国営企業の幹部でも月一〇〇ドルに達しない。彼らは私に「あいつら全員縛り首にしてやりたい」と嘆いていた。もしろん、あいつらというのは、大統領とその取り巻きである。

 ベネズエラではあっという間に六〇〇万人ほどの経済難民が出た。ロシアと中国が支援している中でもそのような状況なのだ。

 今回もロシアにとって中国の支援はさほど当てにならないだろう。すでにオルガルヒアと呼ばれる大金持ちたちの一部は自家用飛行機でロシアから逃げ出している。またクレジットカードが使えないため、タイ滞在中のロシア観光客数百人はホテル代金も飛行機代金も支払うことができずにいる。世界から切り離された国は、経済崩壊する他はない。

 それを避ける手段はロシア人にふたつしか残っていない。

 

18・ロシア難民はどこにいく

 すでにロシア人の一部はアルメニアに移民しているという報道がある。ベネズエラ国民は、他の中南米諸国、スペイン、アメリカに逃れることができたが、ロシアから逃れたい人が多数出てきたとしても、彼らはいったいどこへ行くのか? セルビアか? 中国か? 北朝鮮か? シリアか? ベネズエラか? アメリカか? 日本か? それとも廃墟となったウクライナの街か? 

 

19.ロシア国民よ、立ち上がって!

 かつて、日本、ドイツ、イタリアは破滅の道を歩んだ。それは政府だけの責任ではない。それを選び、それを支持してきた大衆の責任でもある。経済難民として他国へ移れない以上、ロシア国民に残った手立ては、プーチン排除という手段しかない。それは世界のためでもある。

 次の選挙まで二年間狂人が権力の座にいることを許すことができるだろうか。原子力発電所を攻撃し、クラスター爆弾や燃料気化爆弾を使用し、ことさら病院、学校、幼稚園にミサイルを撃ち込む戦争犯罪のオンパレードである。人権という用語は存在しない。そんなロシアでいいのだろうか?

 

 現代はものすごい速さで物事が進む。何事も起こらないというロシア専門家も多いが、ロシア国民はそれほど柔ではないと思う。自国を変革しようとするロシアの人々は平和を求める国際社会といっしょにある。旧勢力のゴルバチョフ財団、エリツィン家に連なる財閥はこの戦争に反対している。新興財閥のオルガルヒや軍幹部が戦争犯罪人プーチンと運命をともにするとは思えない。

 

 私の頭にすぐ去来したのは、日露戦争やアフガン戦争のあとの政権崩壊だ。

ウクライナの粘り強い反撃→→経済制裁NATO軍事支援→戦争泥沼化→ロシア国内疲弊→ロシア国内オルガルヒ・軍他への工作→国内クーデター→プーチン政権崩壊。

 

 いずれにしろ核の脅しをかけてくる狂人には、NATOアメリカも同じように受けて立つという姿勢を見せるほかはない。プーチンはロシアを安全にするためにといっているのだから、ロシアが灰燼に帰することは望んでいないだろう。それともカストロのように玉砕精神なのだろうか?

 世界は第4次世界大戦の瀬戸際にある。

  三月一三日 記   

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ロシア人だってこの戦争には反対だ