釜山の甘川文化村の資料を探してみたが(2)












 前回までは韓国旅行の前半で、実は最も私が訪れたかったのは、甘川文化村である。ここはスラム開発の世界のお手本となるべき場所だ。
 空港の観光案内所でまずは情報を仕入れて見る。釜山は朝鮮戦争で何十万という避難民でごったがえしていたが、その丘に住みついたのは太極道という宗教関係者だったとのこと。
 訪れてみてわかるが、水さえ出ないような場所で、何十年か前までまさにスラムとして取り残されていたのである。







 それが2009年にはじまったプロジェクトで美術の街として何十万人もの観光客を呼ぶことができる文化村に変身した。釜山のマチュピチュなどと呼ばれるそうだが、マチュピチュとは似ても似つかない。似ているならばチリのバルパライッソだ。

 私は観光センターや書店まで尋ねて、この街のプロジェクトについての資料を求めたが、ないのである。英語も韓国語も。薄っぺらいガイドブックがあるだけで。
 このような意図的なスラムの変身プロジェクトはなかなか成功しないものだ。リオ・デ・ジャネイロベネズエラのスラムは、ずっと巨大で、中には犯罪の温床となっているところもあるので、プロジェクトの成功はおぼつかない。

 けれども小説でもノンフィクションでも研究書でもいいから、世界の公共財としてその知見や歴史は共有するべきものであろう。残念だ。もし、どなたかこの街にかかわる詳細な文献などあれば教えてもらいたい。


 さて、次は10回前後寄稿した、「新潮45」炎上商法について考えて見たい。

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