炎上死した新潮45と劣化するマスコミと社会の行きつく先(1)

 
新潮45が炎上死してしまった。
 私の書斎には編集部から送られてきた掲載誌が11冊以上ある。いつから書いたのかを調べて見ると、2006年の12月号だ。
見開きを見ると、そのときの特集記事は「狂宴! エロセレブ」13の怪事件簿。筆者の多くは女性フリーライター。その隣が私の「ここで終わりやで」母子道行き心中、そして佐藤優さんの「北朝鮮狂気のシナリオ」、また以前風靡した中村うさぎさんの「人前でセックスしてみました!」 編集長は今は文芸部門にいる太っちょのおばさんだ。当時は5万部前後は発刊されていたと思う。

 さて、炎上死の最終号の特集は、「野党 百害」、そして特別企画「そんなにおかしいか杉田水脈論文」と続く。執筆者で目立つのは、ケントギルバードとか小川栄太郎とか。私にいわせればデマゴーグである。まったく別の雑誌のようである。




 

















思えば新潮45との付き合いは12年にもなる。
 11本か12本しか原稿を書いていないのだから、新潮45はまるで1年に一度会う恋人のようだ。最初は、2006年は炎天下の夏に、介護殺人の取材のために、京都に2度も出張し、犯人が母親といっしょに住んでいたアパート、関係していた介護施設、留置所などを歩きまわり、刑事のように聞き込み、そして裁判を傍聴した。取材は長くかかった。経費を送って、「えーこんなにかかったんですか」と担当編集者に怒られたが、今では考えられないが、原稿料以上に取材費が出たのである。

 その後国内ものでは、介護、失明、恋愛塾、震災時の東電の問題、などを取り上げ、海外ものでは、ベネズエラミスユニバース、カリブの変態寿司、カリブのオタクキュラソーへのココ・バレンティーンの凱旋などを取り上げた。

 思えば当時はよくこのような企画が通ったものだと思う。本来の新潮社の路線とはほとんど関係がない。その意味では当時の編集長や担当編集はに感謝したい。
書き手にとっていい雑誌とは自分の文章を取り上げてくれる雑誌である。今は私の海外ものの企画など通らない。昨年の「いつまで続く猫ブーム」が最後の掲載となった。

 現在の発刊部数は1万6千冊前後だという。これでは貧すれば鈍する。編集長は、廃刊の危機を感じ続けていたことだろう。安易な行きつく先は、少数者叩き、ヘイト、韓国、中国叩きであろう。

 
新潮45の選択肢は限られていた
 月刊誌の王様「文芸春秋」は王道をいっている。反安倍政権の立場だ。短期的な経済的利益よりも、国民のモラルを落としたり、言論を弾圧することのほうが、ずっと問題と考えているのだろう。
 独裁国家にいた私も同じ立場である。安倍政権が終わったあと、その政権が残した負の遺産による苦い現実が日本に待っていることだろう。(参考 「民主政権下、こうしてメディアは殺される])

 いずれにしろ、文芸春秋と同じ路線でいくわけにはいかない。さらに、エログロに戻るわけにはいかない。新潮の路線では左翼系というわけにもいかない。もともとスキャンダルが信条なのだ。
 そこで、右寄り、ヘイト、少数者叩きしか残っていないというわけだ。そして、ぎりぎりのところを踏み越えてしまった。

 残念だ。実は私は特集などに呼ばれたことはないが、一筆者、せいぜい原稿用紙10枚ぐらいで、舌足らずになりがちである。内容は薄く、グラビアのように人を呼び込む見世物なのである。
むしろ、最終号には、私も愛読していた「マトリ」、「廃炉という仕事」などという興味深いドキュメンタリーがあったのである。執筆者は、次の原稿にもとりかかっていただろうに、稿料の支払いとかはどうなってしまうのだろうか。

校閲は最強だったのに
 それにしても思う。なぜこんなことがおこったのか? なぜぎりぎりの則を踏み外したのか?
「痴漢の触る権利を社会は保障すべきではないのか」(小川)という部分には、校閲者の赤が入ったと私は想像する。 か、たとえば、「痴漢だとて性少数者なのだから、彼らに少しは寛容であってもいいのではないか」とか、私の経験からして新潮の校閲はどこよりもきちんとしているはずだ。あるいは小川が、ママとしたのか、それともリテラにあるように、幹部の押す特集なので忖度が働いたのか(続く)。

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