さて、浅草のカーニバルにいって、久しぶりに本場のリオのカーニバルを思い出した。

 ぼくは何回かいっているけど、1番思い出深いのは、「奴隷解放100年」をテーマにしたカーニバルだったんだ。元々カーニバルは黒人のものだったし、あのときはムラ―タのいかした恋人がいたんだ。(これもフアニ―タには内緒)

 そのときの日誌があるので、それをちょこっと載せてみよう。きっとカーニバルの本質がわかるよ。

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 「サンボードロモ」の 周辺は、すでに興奮した人々の渦に埋め尽くされていた。その大半は中にはいれるわけではない。エスコ−ラ・デ・サンバの入場口付近にたむろして、豪華なアレゴリアや緊張するサンビスタを一目見ようとするか、サンボ−ドロモにそってあるハイウエイに腰を降ろし、端のほうで1度途切れている観覧席の隙間を通して、デスフィ−レの終点のアポテオセ広場にたどり着くエスコ−ラを遠目にみるか、それとも回りの壁にへばり付くようにして、興奮の御裾分けをどうにかただで得るつもりなのである。

 サンバスクールの競争は、「サンボードロモ」という会場で行われるんだ。入場料は高い。

 高級サロンやデスコティクの乱痴気騒ぎにも、街路のささやかな馬鹿騒ぎにも参加しないときは、テレビを見ながら、リオばかりではなく、サンパウロ、サルバド−ル、レシ−フェ、フオルタレ−サ、ポルトアレグレなどの大都市のカ−ニバルをあれこれ批評している。

会場に集まってきた人々は、テレビさえないか、それとも恋人や親や子供、友人が行進に出るので激励しにきたか、それとも冷やかしにでもきているわけだ。

僕の脇を様々な人間が、通り過ぎて行った。

 顔を真白に塗りたくった少女、裸足の子供、破れたズボンを履いた青年、サイケな色彩で染めた胸をむき出しにしているモレ−ナ(褐色の女性)、この暑いのに長袖のワイシャツを着てネクタイまでつけている白人の青年。

 魔法のような目にも止まらぬ早さでサンバのステップを踏んでいる7、8才の少女、タンバリンを叩きながらどこかのエスコ−ラのテ−マソングらしきものを歌って時々おたけびを上げているおかまの集団、「今年もマンゲイラの勝ちに決まってるわ」と叫んでいる中年のムラ−タ(黒人と白人の混血)、そして無数の観光客

 各エスコ−ラが行進するパサレ−ラの上の空間に、テレビカメラを乗せている飛行船が、船尾に赤い炎を光らせ、時々ガスの噴射音を立てながら、ゆらゆら上下していた。

評価は、エンレ−ド(テ−マ)、ファンタシ−ア(コスチュ−ム)、アレゴリア・エ・アデレ−コス(出しと飾りつけ)、バテリア(パ−カシオン)、サンバ・エンレ−ド(テ−マソング)、オルモニ−ア(ハ−モニ−)、メストレサ−ラ・エ・ポルタバンデ−ラ(司会と旗持ち)、エボルシオン(ダンスの流れ)、アブレア−ラス・エ・コミシオン・デ・フレンチ(露払いと先頭をきる委員たち)、コンフント(全体)などの多くの要素の他に、与えられた時間内に終わるか否かということまで考慮された。

 もっとも大事なポイントは、テ−マソングをアレゴリアや踊りを通していかにうまく表現するかであるということだったが、最近はどれだけ金をかけたかが勝負の別れ目になるなどと囁かれているんだ。

 またテ−マは最もブラジル的なものでなくてはならない、とか必ず伝統的なバイア−ナ(バイア地方の人の服装)の集団がなければならないとかの規定があった。

 そのスコ−ラ・デ・サンバのテ−マは、ばかげた寺院(ブラジルのバ−)、「さよならブラジル」、「ブラジルの水族館」、「もっとましな話を」、「告げるのはだれ」、「混血の牛」、「黄金を捜して」、「美しきカリオカ副王の夢」、明日登場する昨年、1昨年と2連勝しているマンゲイラのテ−マは、「夢かうつつか100年の自由」というものだった。

 その歌詞は次のように歌う。

 ほんとうかしら
かつて、自由が輝いていたって
それとも すべてははかない夢
ほんとうかしら
あんなに夢みた黄金に輝く法律(奴隷解放令のこと)
あんなと遠い昔に署名されたのに
奴隷のおわりじゃなかったなんて
いま、この現実のなかに
どこに自由があるの
どこにあるの、だれひとり見たこともありゃしない、
ねえ、そこのおにいさん 忘れないで
黒人だっていっしょに
わたしたちブラジルの富みを築き上げたのよ

神様に聞いてごらん
だれがこの水彩画を描いたのか
たすけて!
奴隷小屋の鞭  みじめなファベ−ラの囚人

夢を見たわ・・・
パルマ−レスのズンビがもどってきた、
黒人の哀しみがおわった、
あたらしい救い

神様・・・
悪と戦う正義があるわ
どれほどたくさんの血が流れたの
人種偏見をなくすために

黒人、サンバ、
黒人はカポエラを踊る
彼は王様様 緑と赤の
パルマ−レスのマンゲイラのなかで
     (続く)

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 ところで風樹さんが福岡LOVE FMナヴィゲーター モーリー・ロバートソン氏の「Elan Vital」に出演してアジアとラテンの国々の冒険を語るよ。12日(火)23:10 - 23:50。九州地方の人は聴いてみてね。