黒魔術は利く。
理由がある。
鈴木一郎氏の「ブラジルの黒人密教」によると、カンドンブレ、ウンバンダ、などのアフリカ系宗教の教団における、マクンバのかけ方は以下のような手続きを踏むという。
1.教団に黒魔術をかけたい人間が誰か、なぜなのかその理由を言う。
2.教団はその人間の悪人性について、周辺調査をする。
3.呪う対象としていいかどうかを決定する。
4.呪うことが決まると、教団員全員にそれが知れ渡る。
5.呪いの儀式を行う。
6.呪われた人間(おもに白人)の周辺で不思議なことが次々と起こる。無言電話、
部屋の中の異変、羊の頭が届けられる、など
7.そのうち呪われ人は精神的に病んでいく。あるいは、最後は交通事故にあい死ぬ
か、瀕死の重傷を負う。
8.したがって、呪われたと知ったときは、金持ちならばとりあえず、ヨーロッパなど
に逃避する。
黒魔術は社会的復讐行為なのである。
しかし、ぼくを含め、書き手は、黒魔術などと、できるだけおどろおどろしい言葉を使って読者の注意をひこうとするのだが、実際にはキューバ、ベネズエラでサンテリア、ブラジルでカンドンブレ、ウンバンダなどと呼ばれるアフリカ系宗教は、病気の治癒、商売繁盛、就職の成功など、現世の利益を望む他の宗教とさほど変わりはないのである。
このMaria Lionza教団の聖地にも、病気にかかっている幼児の治癒を願うために訪問している夫婦を見かけた。
彼らはアフリカ系の言語をまじえて歌い、踊りながら、忍者が使うような煙を噴出する花火を使うのだった(写真)。
もともとアフリカから商品として連れてこられた奴隷たちは、アフリカの宗教を信仰したくて逃亡し、キロンボと呼ばれる村をジャングルに作ったり、あるいはキリスト教の神と習合させ密かにアフリカのよろずの神(鉄、雷、水などの神)に祈りをささげたのである。
とりわけ、アマゾン地域などでは、それがインディオの宗教や呪術、薬草医と結びつき、
独特の民間医療を施す。
さて、次回はエクアドルのアマゾンの呪術師の思い出。