ベネズエラの中の日本人(1)

「チーノ!」
  ベネズエラでは日本人はこう呼ばれる。中米の田舎あたりだと、こう呼ばれることも多いかもしれない。ベネズエラバレンシアあたりでは、20年ほど前ならば、日本人が歩いていると、「チーノ!」といって子供たちに石を投げられることもあった。



 チーノ! には自分の民族よりも下だというある種の蔑視がある。

 なぜか? 多分、昔ベネズエラや中米以北の国々に最初中国人は、鉄道建設などのためのクーリーとして入植したからであろう。

 下働きの奴め、ということだ。

 しかし中南米でも他の国の大都市では、Japonesと呼ばれることが多い。ベネズエラの教育水準が大きく影響しているのではないかと思う。

 また、ベネズエラでは日本人の存在感がほとんどないからともいえよう。中国系はこのバレンシアでも多いし、スーパー、食堂など経営している。だが、このベネズエラの第三の都市に日本人はいない。

 さらに政治の影響もある。なにせ、ここの大統領は大の中国ひいき、いまだ毛沢東を信奉しているのである。
 中国製のロケットを打ち上げる、中国製の携帯を利用する、など、結びつきは強い。
 
 そのくせよくわからないが、日本の影響といえば、すし屋だけはいたるところにある。もちろん、ベネズエラ化した寿司で、お茶にはたっぷりと蜂蜜が入っていたり、まぐろの上にはイチゴジャムがのせられていたりするのだが。

 そして小学校高学年向けの地理の教科書には、中近東、西欧、ロシア東欧、中南米の区分はあってもアジアはない。ベネズエラからは遠いのだ。
 日本は不思議なことに、アメリカ、カナダ、日本の区分に入っていて、2ページ近くさかれている。

 それでも日本人はチーノ! としか呼ばれない。人によっては怒っていちいち日本人と言い返すが、ぼくは面倒なのでそのままチーノで通している。

 3000万人ほどの人口のベネズエラ日系人はたった13家族だという。そういったのは、 ぼくの秘書候補として面接にきた、日系人のIrenaだった。(次回は彼女の話)