福島の母子をいかに守るか

「高木を出せ! 政務三役はどこへ行った?」
「家族がばらばらだ!」
「子供を守れ!」
「20ミリシーベルトを即時撤回せよ!」
放射能の灰を東京にぶちまけるぞ!」

 文部省横の外のフロアでは激しい怒りの声が湧き上がっていた。

 文部省の次長は多勢に無勢だろう。それでも役人らしくのらりくらりと返答する。役人なので、もちろん責任はとりたくない。

「20ミリがいいとはいっていません。低くする努力が必要です。だから夏休みまでに線量をモニタリングします」

 驚くほど悠長な回答である。ぼくは拙著「ホームレス人生講座」で、阪神大震災時の政府、行政、官僚の行動は、植民地の行政官のそれであると指摘したが、またそのコピーをみるがごとし。

 責任をとりたくない、賠償費用をこれ以上増やしたくない、人口の多い福島市郡山市は、捨て置いて、ごまかしの数値で学校を騙しておけ。

 それが本音だろう。福島県福島市飯野町の二人の児童を連れた主婦の話をきいた。(原発50キロほど)

「市では中学校から同意書が回ってくるんです。外でクラブ活動をしてもいいという、同意書にサインするようにって。(3.8マイクロシーベルト以下なら文部省は問題なしという通達を出している)」
「うちの子はバスケ部とサッカー部です。バスケはまだ屋内だからいいけど、サッカーは屋外です。サッカー部の親たちはサインしませんでした。野球部はしたんです。でもスライディングはしないとか、そんな野球ってあります」
「私はサインしたくなくてもバスケ部の子はサインしてと親にせがむんです。なぜならば仲間はずれになってしまうから。でも、家の庭は3.4マイクロシーべルトで、でもアルファ線を測れる線量計で地面を測ると20マイクロシーベルト、27マイクロシーベルとという値が出るんです。(アルファ線だと、プルトニウムの可能性大)

「学校に上がる前の小さな子どもがいても、中学生のおにいちゃん、おねえぢゃんは、授業がある限り、疎開もできません。しかも受験生なんです。家族でも放射能への対し方は、ばらばら。おじいちゃん、おばあちゃんは、とくに放射線は関係ない。孫だけが心配。でも中学校ぐらいになると親の意見は聞かないし。それにもう放射能の話しなんか聞きたくもないという様子です」
「学校の先生もどうすればいいのかわからないというふです。つまり文部省の通達、3.6マイクロシーベル以下ならオーケーに従うしかないわけです」
「蕨やこごみを食べてしまいました。翌日は出荷制限が出たのに。放射能のことを考えると夜も眠れません」

「ほかのおかあさんたちは、とくに気にしていないようです」

 この光景はチェルノブイリの爆発直後の周辺都市のままである。学校は運動会やマラソン大会を主催し、おかあさんたちは、赤ちゃんを乗せ、のんびりとマスクもせずに歩いていたのである。

 そのあと、その子供たちの幾人かの運命は、どうなったのか?

 放射能よりもウォッカが悪かった、心配しすぎて病気になった、気のせいだ、タバコのほうがもっと悪い-旧ソ連と同様の言葉がすでにマスコミに載っている。
 この件も後述するが、フランスや世界原発村の圧力を受けて、旧ソ連は被害を過小に書き換えたのである。明らかな甲状腺がんを除いて白血病も他のがんも発症しないことに決めたのである。

 さて、福島はそして日本はどうする? (続く)
福島県民 怒りの断片 大臣出てこい  文部省にて