日本の原発技術が世界を変える

 先週、お知らせした原子力文化の執筆者だが、鈴木光司さんは、らせんやリングの作家なので、ご存じの方が多いだろう。
 けれども豊田有恒さんはご存じない方もいるかもしれない。ぼくは、3月の段階でブログに書こうかどうか迷っていた豊田有恒さんも7月号には執筆者として出ていたので、少し述べておこう。
 彼はいわゆる良識的コメンテーターとして養成された人物とみて間違いない。昨年12月に『日本の原発技術が世界を変える』(祥伝社)を出版している。
 あまりにタイミングがよく、ブログで扱うのも気の毒と思ったのだが、彼は早々原子力文化に執筆しているのだから、ここで溯上にあげるのがよいと考える。

 倫理感を持ち合わせている人間ならば、どこかで反省の弁でも述べているはずだろうから。

 彼の本は、「世界一安全な日本の原発を世界に広めることこそが、日本が果たせる最大の世界貢献だ!」 というのである。ある意味当たったかもしれない。ドイツやイタリアに十分な影響をあたえたのだから。

 さて、この本の中で、良識的コメンテーターが良く使う記述があるので、私のコメントといっしょに一部紹介しよう。

放射線で強くなる 
「現存している生物は、すべて、この放射線地獄をかいくぐって生き残ってきた種の子孫である。放射線を浴びると『たいへんだ。放射線が来たぞ。さあ、がんばって生き残ろう』というサインが出て、身体機能を強化するらしい。念のため誤解のないように言っておくが、放射線が体に良いと主張しているわけではない」(豊田)

 これは長崎大学に乗っ取られた、福島県医科大学の「放射線に強い子を作ろう」という密かなプロジェクトの思想と同じである。

原発村の重役をよいしょ
「当時、某電力会社の重役で、のちの参議院議員になる加納時男氏にお目にかかった際、H・T氏と対談したことを、お話した記憶がある。加納氏は、H・T氏の強烈なカリスマ性に脅威を感じて『週刊プレーボーイ』の誌上で対決した。週刊誌側は、勝った方を紙面で支持すると約束したという。結局、さしものH・T氏も、専門家の該博な知識の前に、ぐうの音も出なかったらしい」(豊田)

 さりげなく電力会社の重役や元電力会社の政治家をよいしょする。まことに巧妙である。もちろん、H・T氏とは広瀬隆さんのことである。なお、週刊プレーボーイは一貫して原発には否定的である。

★取材がしにくくなるので電力さんの供応を受けよう
原発はたいてい辺地にあるから、取材に一泊というケースが多くなる。現地の電力側が一席もうけてくれる場合もある、その場合は、ありがたく饗応に与ることにした。断れば、取材に影響するかもしれないからだ。こういう場合は、取材を終えて帰京してから、取材費としてなにがしかの金額を送金した」(豊田)

 うむ、いくら送金したのだろうか? なぜその場で割り勘にしなかったのか。取材は一期一会。ぼくは、取材時には、東電総務部の人間よりも早く請求書を手にして、東電分ももちろん支払った。とはいえ、出版社もちだけどね。
 「取材に影響」などと考えたならば、決して否定的な意見は書けなくなってしまうだろう。

★ぼくは原発批判派だ
「ぼくは、無条件推進派ではない。むしろ批判派だと自負している。原発について、批判すべきは批判してきたつもりである」(豊田)
 
 多くの原発村コメンテータ・作家の書籍に同じ言葉が書かれている。何か申し合わせでもしているのだろうか。

 その他「地震が証明した日本原発の安全性」とか「ウラン節約のカギとなるプルサーマル運転」(おかげで福島東電第一原発3号炉は核爆発した)とか、「世界に比べて稼働率が低いのは柏崎の地震のせいだ」とか、鼻白むような項目や主張も多い。
 中には同意できる事実もある。だからこそ、このようなプルト君を飲んでしまった作家には要注意だ。

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愛 フクシマの黙示録
 この書籍を書いている途中で、浜通り、とりわけ双葉町大熊町の町史や町長の言説などは、日本の戦後を象徴していると考えるようになった。この町の人々を責めるのではなく、過去を検証しなくては、日本の将来は暗いと考える。だから、次回から、時々拙著の一部から抜粋していこうと思う。
 なお、この原子力文化よりも凄いのが原子力燃料政策研究会の機関誌Plutoniumである。
 ここにはプルト君を飲んだ人々が多数出てくる。もちろん双葉町町長 故岩本忠夫さんもだ。

山木屋で追われ、浪江はここまで HPの方の現地レポートです。