チェルノブイリハートとクリス・バスビ―博士     

 今週、渋谷で「チェルノブイリハート」を見た。
 20年以上たって、さまざまな遺伝子の損傷に生まれながら心身が毀損される子どもたちを見るのは、辛い経験である。
 ベラルーシチェルノブイリから80キロの町で、健康な赤ん坊は20%前後だという。
 核種の中でもセシウム137の影響が主なものだろう。それをいまだ、セシウム137の影響は皆無という専門家が大勢いるのだから、狂気の沙汰としかいいようがない。

 けれどもここでとりあげたいのは、低線量被曝の危険を強調するERCC 欧州放射線リスク委員会のクリス・バスビ―博士の論文

Very Low Dose Fetal Exposure to Chernobyl Contamination Resulted in Increases in Infant Leukemia in Europe and Raises Questions about Current Radiation Risk Models

 4月の上旬から、何度もこのレポートはブログで紹介している。

 けれども、よくよく最後のグラフを眺めると、あれ、変? という疑念が以前より萌していた。ベラルーシは2ミリシーベルトと被曝量が多いのに、なぜか乳児が白血病になる寄与率は0.06mSVのドイツや0.02mSVのイギリスとさほど変わらない。
 普通に考えれば、激増してもおかしくはない。不思議である。ギリシアは0.2ミリシーベルトで、3倍も白血病が増えているのだから。
 この疫学調査が、ある一定の数値内では低線量のほうがむしろ人体に有害であるという彼らのモデルのひとつの根拠ともなっている。
 でも、なにかおかしくないか? むしろ、線量が多ければ多いほど影響があるというほうが自然だろう。その点ではICRPのほうが正しいのではないか?

 そこで、バスビ―博士が東京を訪れたおりの記者会見で彼本人に以下の質問することにした。いつものとおり、ぼくは積極的な小学生のように真っ先にハイと手をあげて、質問順ナンバーワン。

1.貴論文のイギリスとドイツの例は、10万人で一人白血病が増えるか否かである。それは統計学的に誤差と考えられるのではないか?
2.ベラルーシは線量が高いのに白血病の増加率はイギリスやドイツと変わらない。もともと母集団あるいは疫学統計的に疑義があるのではないか?

 さて、それに対する博士の回答は次のようなものであった。

ICRPのモデルを信じているから、そのような疑問がわくのではないか? ベラルーシの場合は、線量が高く、赤ん坊が死産してしまうので、白血病は増えない。DNA(細胞)には低い線量で壊される部分があるので、それを壊されると、残りはある一定限度の範囲の線量ならば、壊れない」

 ふーむ。さて、読者のみなさんはどう考えるだろうか? 

 ぼくはベラルーシ白血病の発生率がイギリスやドイツと同じというのは、まったく根拠のない統計にもとづくものだろうと考えている。白血病や複合的な症状が多数出たと想像するのである。そもそも86年の直前と直後を比べているので、あまり信頼性はないのだ。

 つまり、バスビ―博士のレポートも一部は幻の根拠のない統計に基づいているとぼくは考えている。

 けれども、レポートで、唯一顕著な例で信頼性が高かそうなのはギリシアの場合である。この調査の基準は子宮への実行線量であろうから、たとえばギリシアの場合の吸収線量は、単純に逆算すると、10ミリシーベルトとなる。 
(組織荷重係数 生殖腺=0.2、セシウム放射線荷重係数は1、吸収線量×0.2×1=0.2ミリシーべルト)

 何十万人もの吸収線量をほんとうに測れたのだろうか? という疑問がわくのだが、ギリシアの数値がある程度正しければ、もちろん妊婦の方は福島市郡山市にいるのはやはりやめたほうがいい、ということになる。

 さて、ぼくは公平に放射線学への疑義を書いてきた。今この学問は、普通の人々の視線を久しぶりに受けて変革が求められている。象牙の塔から逃れ、放射線のための学問ではなく、人のための学問になってもらいたい。
 
 もちろん崎山比早子博士のような信頼できる方もいるのだが。

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ところで、ブログの内容がぴんとこない、がんばってなどと激励されて、ありがたいのである。ただ、「愛! フクシマの黙示録」とブログの内容はぼくの中では連動しているので、時々、連携して掲載していこうと思う。

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