今日、ホームレスに戻った! その2

 上野公園で寝たあともホームレス行脚は続く。まるで現代の山頭火。渋谷、山谷、荒川河川敷、名古屋、大阪。最後に原発家族疎開の西成で見たものは? 本書は震災後の日本人に対する予言の書である。

第1話 ホームレスデビューの悲惨
             上野編
第2話 原宿に遺体を探す
             渋谷編
第3話 一瞬のホームレススター 
             名古屋編
第4話 西成の色男 
             大阪編

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はじめに
 原因は三・一一震災・原発事故である。あの事故のおかげもあって、おれが請け負っている海外の事業の開始が遅れに遅れている。
 まもなく貯蓄が尽きようとしている。
 ホームレスの聖地西成への一家疎開にも金がかかった。おれは政府も東電も信じなかった。安全とは危険、危険とは一層危険の意味なのだ。
日本の一〇〇倍殺人率が高いベネズエラ放射線を扱った後に、昨年末帰国したおれはあらゆる危険に敏感だ。つまり臆病だ。だから逃げた。すると想定外の金がかかった。でも、自主避難は、賠償しないそうだ。福島では、避難は別の漢字で、自主非難に代えられているらしい。ひどい話だ。いずれ、東電とは闘う。
 おまけに原発事故のまえに迂闊にも一〇数年前に死去した母親の墓を買ってしまった。墓はそれなりに高い。おまけに息子が受験だ。やめたほうがいいというのに、Z会などという塾に通っている。塾は金がかかる。
 家では一年間働いていないので、妻はおれと口もきかない。娘も、怪訝な顔で、「おとうさん、なにしてんの、毎日?」という。
 居づらい。針のむしろだ。
 もむろん努力はした。毎日一つ履歴書を出した。だが出しても出してもどの企業からも梨の礫だ。結局おれを優しく受け入れてくれるのはホームレス界だけのようだ。
 そこで、覚悟を決めた。その準備として、一家疎開は西成を選んだ。あそこは震災があろうがなかろうが、何一〇年も前から日本人の最後の避難場所なのである。ここに来ればおれにも仕事があるし、中学生の長男だって身分を隠して働くことができるだろう。
大袈裟に聞こえるかもしれないが、予言者のおれは読者に忠告しておく。そんな時代は遠からず来るのである。経済学者や政府の中には、景気回復ができるような口ぶりの人間がまだいるが、バカをこけといいたい。今も将来も日本はそんな環境にはない。
人口減少、新興国との競争激化、円高、海外へ工場流出、高齢化と貧困者増加に伴う支出増、一層の財政赤字、迫りくる破たん、ノータリンの政府―― それが冷徹な目で見る日本の姿である。
バブル崩壊後は不景気が常態であり、今後もそうである。だからこれは不景気とは呼ばない。何か? 衰退である。
だから、それを前提として、国家も国民もどう生きるかを考えるのが先決なのだ。そのヒントがたんまり詰まっているのが本書である。

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★しばらく、代々木公園で友人のホームレスの遺体を探したころの話を続けます。

★まもなく発刊される本書の上野編は、ホームレスパパを編集、縮めたものです。