今日、ホームレスに戻った その7

原宿で遺体を探す
2.公園で契りを結ぶ
チンピラホームレス
 おれは、原宿の方角へと歩いていく。広い遊歩道には照明の光がともされた。噴水を超えた側のテント村はひっそりとしている。芝の中で段ボールを敷いてなにか食べているおじさんがいる。タバコを差し出して、代々木公園の寝心地を聞くと、
「いいわけないよ、でも、おれはまだ四日目だよ。仕事やってたけど、あぶれちゃって。一月飯場にいたけどね。金? 貯まらないよ。競艇やってだめだよ。またお盆が過ぎれば仕事やるさ」
 お盆の期間は日雇いの仕事がなくなり、彼らのようなプチ野宿者が増えるのかもしれない。
 おれは「じゃあ、おれもこのあたりで寝るから」といって、別れを告げ、歩みを進める。すると、ハーモニカのメロディが聞こえてくる。懐かしい、羽生の宿だ。
 その方向に誘われて歩いて行く、ハーモニカを吹いているのは、原宿門側のテントの前で座っている男だとわかる。隣はおれが親しくしている元電電公社の夫婦者のテントである。
 おれは和やかな音楽のせいか珍しく煙草を吸いたくなり、ナップサックから煙草を取り出したが、ライターが見つからない。そこで、ハーモニカの男のところまで歩いてゆき、火を借り、お礼にタバコを指し出した。けれども、男は、「あるからいらない」とタバコをぶっきらぼうに拒絶した。まれにいる一般人に逆恨みを抱いている反社会的ホームレスの一人のようだ。
 遊歩道の街灯の光と煙草の火に男の顔が浮かび上がっていた。角ばった顎に髭を生やして、目が尖っていて、頬がこけているせいか剣呑な顔つきに見える。四〇代後半ぐらいだろう。この顔で、若くしてホームレスなのだから、前科者に違いない。
 おれは男にきいた。
「おじさんは長いですか?」
「長いなんて、威張れやしないよ。こんなところに。あんたはホームレスかい?」
 おれは以前上野にいたことはあるといい、上野よりもここのほうが広くていいと付け加えた。
「いや、ここもだめだよ。だれかがテントを畳んで外へ出るとそこにはロープを張ってもうだれも張らないようにしているよ。怖いんだろうな。これ以上増えると彼らの手に負えなくなってくるから」
 おれは大阪城公園の密集したテント村を思い出した。あそこは自治区のようになっていて、ホームレスに郵便さえ届くのだった。
「ふーん、大阪にもいたことあるのかい。おれは通天閣のとこのやくざの博打場に出入りはしていたよ。あんたはアパートにいるのかい?」
「ええ、いちおう」
 そう答えたとたに、態度が変わる。
「この公園はなんでもいるよ。蛇もミミズもこんなでかいネズミもね。テントの中は暑くてとてもいられないよ。まあアパートにいるやつはわからんよ。早く帰んな」
 その帰んな、には悪意が含まれている。おれは夫婦ホームレスの奥さんの言葉を思い出した。
―あの男が隣にきてから、とんでもないことになっているよ。一人じゃ何やられるかわかったもんじゃない、チンピラなんだよ
 この男がチンピラホームレスなのだ。
「隣のおじさんたちはいないんですか?」
 おれは隣のテントに視線を這わせた。知り合いのテントの左隣にも新たなテントが張られていた。
「ふん、知り合いかい、今日はみないね」
 男はぺっとつばを吐いた。
 おれは不穏なものを感じ「じゃあ、お元気でね」とその場をあとにして公園の門の方角へと歩いた。―続く―

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川内村在住の作家の『裸のフクシマ』(たくきよしみつ)を読んだ。住んでいなければ書けないこと、住んでいるからこそ書けないこと、があると思う。この本で震災時に近隣にある風力発電がまったく機能しなかったことなどを知った。
 河野太郎氏にも現実を直視してもらいたいといいたいものだ。彼は風力発電はきちんと機能していると思っているようだが、多くは補助金を得るための施策でしかない。スペインのような地形とは違うのだから、日本では難しい。可能性としては海に設置する風力発電だろうが? 中心とする発電は、天然ガス、石炭利用の二酸化炭素分離技術を使った、最新鋭のガスコンバインド発電だろう。

★たくきさんがいうとおり、再生可能エネルギー補助金つけの利権になってしまうだろう。ぼくの知人の商社マンは以前から核心をついたことをいっていた。「日本はイカサマ博打経済だ。胴元は、官僚、政治家、一部ヤクザ。てら銭の税金を国民からまきあげて、それをもとに賭場に入れて、イカサマで胴元の懐に盗みとる」

★また前記の本には、原発の「人夫出し」に地域の区長や地元の社長などがかかわり、そしてある日突然、白血病でひとが死ぬ、と触れられている。白血病は、東電、原発などの言葉がそうであったように、浜通りでは禁句であろう。
 血縁、教育、仕事、金で電力に浜通りが植民地化され、日本人が洗脳されていく様子は、「愛! フクシマの黙示録」に。応援してね!

福島県の子どもたちに安心な食材を届けよう! プロジェクト 実は福島県の政治家がぼくにこういっていた。「福島市は、給食は検査しているけど、東京はしてないから、むしろ内部被ばくの可能性があって、かわいそうだ」