最貧の地から世界一裕福な地へ

 ぼくは、ホームレス界(今は生活保護をとっている人が多い)の集中する山谷から、一気に世界一裕福な国へと旅立った。
 おすそ分けをもらいにいくためだ。

 カタール
 年収は2000万円とも3000万円ともいわれる。税金はなし。医療、教育など無料だ。
ドーハの町で散見するカタール人は、みな幸せそうだ。経済の心配がないのだ。日本とは対極にある。
経済を裏打ちしているのは、天然ガスと石油。
 それらの資源関連の仕事で働くのは、休日、金曜日の町を歩いている、インド人、フィリピン人。時折、欧米系や日本人、韓国人が混じる。出稼ぎの民。

 これらの人々は、この国で働いてもよいかどうか、政府の機関で伝染病のチェックを行う必要がある。
 一日に何百、何千という外国人労働者が群畜よろしく列を作り、カタール政府のもとで働くインド人に追い立てられる。
「さあ、こっちに並んで」
「ほら、なにやっているの、おまえはこっちにいって」

 このぼくもその中の一人。
 指紋チェック、そしてパスポートのチェック。
パスポートを差し出すと、そこには窓ガラスを隔てて、妙齢なカタールの女性がいる。例のバルカで、澄んだ黒い瞳だけを覗かせ、アバーヤと呼ばれる黒衣から白い腕だけをむき出しにしている。どきっとする。
その腕全体に青い刺青が施されているのだ。
緊張と制限された中での鋭利な胸を刺すような色気。
 一瞬でその邂逅は終わる。
 だが、彼女の残滓は一生目に焼きつくだろうという確信がする。

 血液検査はエイズも含め、あれこれ調査するのだという。

 胸のレントゲン写真は日本の大昔のもののように、上半身裸。なぜ、こんな裕福な国なのに、群畜の外人チェックは、旧式のレントゲン機械なのだろうか。
 放射線量も多いに違いない。
 さて、この検査で、ぼくはひどい目にあうことになる・・・・続く

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 今日、ホームレスに戻ることにした、現代を読み解く本:日刊ゲンダイで、書評が出ました(鎌田慧
 愛! フクシマの黙示録 第10巻 原発放射能の秘密