放射能音頭

 原発爆発一年。ぼくはホームレス界から、別の世界へと旅たった。だが驚くことにここにも日本の放射能が追いかけてきたのである。
 一年前を思い出して。

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ぼくは最後になるかもしれないブログを渾身の力で書きあげた。でも深刻ぶるのは好きじゃないので、おちゃらけた感じに仕立てた。

放射能街道をゆく

あっと驚く特ダネを、おったまげ良太がまたもすっぱ抜く。
腰抜けマスコミ入れぬ50キロ圏。走ってみたよ、この良太。川俣、山木屋、浪江、飯館、放射能街道逆走さ。
手にはおんぼろ線量計ウクライナ製だよ、貧乏人、10、20、30、50、どんどん上がるシーベルト。浪江は津島で爆発だ! あっ、それ、それ! 
騙されちまった避難民。詐欺師は、ぶんぶん、ぶんぶん文部省。子どもの健康、なんのその、もっと大事なものがあるとくりゃ、もんじゅ原発プルト君、ぼくらの金ずる離さない。あっ、それ! それ!
まだまだいたぞ詐欺集団、福島県もそのひとつ、県民出しちゃ、立つ瀬ねえ、せっかくとった知事の座を、県政潰しちゃ、仕事ねえ、絶対出さない、逃がさない、放射能で満腹だ、SPEEDIなんか隠しておけ。あっ、それ! それ!



 山また山の山木屋で、追ってくるのは誰だろう? バックミラーに映っている、謎の車両が叫んでいる。白い車体の乗用車、あれこれ煩い、なんの用? スピードメータ70キロ、もしやここで取り締まり、「良太君、とめなよ」、そういうのはぼくの美人秘書、あっ、それ! それ!
 とまってみたよ、山木屋診療所前、歩いてくるのは誰だろう?
「ごめんなさいね、わたしたち、警視庁からきてるのよ」
 あれあれ! 私服の警官だ。それも婦人警官とは、恐れ入ったの為五郎。
「免許証出してくださいな。レンタカーナンバーは怪しいよ」
 間違えられた、泥棒に、警戒区域は泥棒天国。
「銀行、コンビニ、民家、オフィス、工場、もぬけの殻で、やってくるくる、大型トラックの凄い奴。関西方面からの泥集団。あなたはそれの一味なの?」
「違うよ、まさか、ぼくたちは、善良市民でございます。どうぞ調べてくださいな」
 良太の無違反免許証を、他の私服が無線で照会。前科なんかありません。
うっかり口を滑らせた。
「伊井町のおいしい宇宙人ラーメン、さぼっていきなよ、おいしいよ」
「それはできない。わたしたち、昨日ついたよ、福島に。ほんとここは田舎なの、早く帰りたい、東京に」 
 そんとき来たよ、不思議な車、時々つけている灰色の。そこから出てきたサングラス、黒服スーツの紳士だよ、慌てて駆け寄る婦人警官。なんだか話して、敬礼し、とたんにぼくらは自由の身。戻ってきたよ、免許証!
「ごめんなさいね。疑いかけて。どうぞいってくださいな」
不思議や不思議。怪しい男。黙って去ったよ、川俣へ。あっ、 それ! それ!
「ならば 浪江へ突進だ、お巡りさんも行きますか」


「いえいえ、わたしら、ばいばいね ばいばいばいばいばいばいね。これ以上放射能浴びるのはけっこうよ」
逃げていくぞ、警視庁。覆面パトカー、行っちまう。 あっ、それ! それ!
途中であったよ、標識に×のついた浪江町。かまわず進むよ、津島地区。見えてきたよ、バリケード。ブレーキ踏むと、脱兎のごとく、駆けてくる、くる 警官、4人組。

「ここでおしまい、入れません。放射能が凄すぎる」
「取材にきたよ。ぼくたちは。こちらは放射能専門家」
 おんぼろ線量計、握りしめ、外へ出てみる。とたんに上がるシーベルト。100か200か、とんでもないぞ、みるみる上がる、線量計
 若い警官、おったまげ、ついに爆発、線量計、ぶっこわれたぞ、もうだめだ。
 目ん玉剥いて驚いて、ぶるぶる震える若者警官。それもそのはず防御はマスクにヘルメット。 


「だいじょうぶでしょうか。わたしたち?」
 放射能専門家の美人秘書が答えます。
「長いは無用。1日、2日で、食事は車内で気をつけて」
「何をいいます。わたしらは市民を守る警察官。警戒区域2週間、24時間交代勤務で防護服もありませぬ。食事はコンビニ弁当で、今度はどこへ送られる? きっと南相馬警戒区域。私ら南の警察官、とっても寒いし、帰りたい。怖いぞ、怖い、放射能
セシウム怖し、目ん玉やられて白内障、心臓、肝臓、腎臓も不調になるわ。ストロンチウムは骨肉腫に白血病プルトニウムは肺癌よ。ぶらぶら病で仕事もできない」
「あれまあ、怖いや、放射能。上司はへっちゃらいうてたに。特別手当も出ませんわ」
「若いのに大変ね、なんで来ないの年よりは?」
「ぼくら下っ端かき集め、おれたち食うよ、放射能。年は24、結婚さえもしてないのに」
震え声の警察官、心で退職考える。
あっ、それ! それ!
「では、さよなら、さよなら、いってみますよ、飯館村
 

 山また山を超えて行く、熊も出るそうな、飯館村。あっというまに着いちゃった。人影見えない飯館に。水田淋しく放置され、牛さんだけが鳴いていた。大量被曝の実験場、ひどいもんだよ、福島県と福島医大。呼んでみたのは山神博士、文部省が送り込む。1000億円医大がもらう、山神博士と抱き合わせ。

「100ミリシーベルトへっちゃらだ、逃げちゃいけない飯館村」 
放射能好きの学者さん、長崎、広島から騙しにくるよ。あれ、あれ、こわい。ある人、いうよ、邪悪な宇宙人。 
あっ、それ! それ!

 長いは無用、帰ります。これでおしまい、放射能。何時の日か、大特ダネをもってくる、それともどこかで消えちまう。怖いけども特攻隊、ああ、もしかしたら最終回、あっ、それ! それ! みなさん、さよなら、さよなら、お元気で、もしかしたら、お別れだよ、永遠の ばーい!

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★「愛! フクシマの黙示録」12話 拉致せよ、からの抜粋です。
★写真も添付しようと思ったのですが、インターネットの状況が悪く、アップできない場所にいます。
★このはるかかなたにも日本の放射脳の影響があり、今の仕事に不都合が生じています。どれだけ、原発は日本のマイナスになるのか・・・
★被災地の方々が一日も早く、以前の生活に近いところまで戻ることができれば、と願っています。