特急誘拐(2) 警官には気をつけろ!

 通関会社の友人のフレディ・ギテーレスは2日無断で休んでいた。電話がやっと通じると、誘拐されたのだという。しかも警官に。
 顛末はこうだ。

 港近くのオフィスを夕刻に出た。パトカーの前にいる中年の男二人手招きをした。インテリジェンス関係の警官のようだった。
 悪い予感がした。
「こっちにこい」
 そばまでいくと、銃をつきつけられ、両手をあげて身体検査された。
「ヤクはどこだ?」
「えっ、そんなもん」
「乗れ」
 後部座席に押し込まれ、隣に少し若い警官がのった。
「おまえの家にいくぞ」
「コカインがあるのはわかっている」
 まったくの濡れぎねだった。
 警官は家への正しい道順を通って郊外のほうへ出ていく。彼の家をすでに下見をしていたのだ。
「家にいったって、なにもないですが」
「だまれ、ちゃんと情報が来ている」
 車は家の前でとまった。不幸中の幸いで、この夕刻は妻はまだ仕事だったし、娘はベビーシッターの家にいた。
 家の中に入り、彼らはいった。
「ブツを出せよ」
「でも、ないんです」
「じゃあ、やさがしするぞ、いいか」
「どうぞ」
 彼らは机や棚の引き出しをあけ、洋服を出し、下着を出し、
「へ、かーちゃんに、こんなん着せているのか」
 警官は下卑た笑いを作った。
 フレディは数週間前の出来事を思い出し、さらなる恐怖が心の底からわきあがってきた。港の倉庫からコカインが見つかり、倉庫の従業員が容疑者として刑務所に収監されたのである。
友人の誘いで、その男を刑務所から解放せよというストライキに出ていた。犯人は彼ではなく、倉庫会社の社長であることは公然の事実だった。
 警官たちは、どこをどうさがしても、コカインなど出て来るはずがない。
「じゃあ、いいですか」
 すると、年上のほうの警官がいった。
「3000ドルだせ、さもなきゃ、ここにコカインを置くぞ」
ベネズラの刑務所での囚人の死亡率は高い。
 結局、フレディは親戚中に電話をして、金をかき集め、どうにか刑務所行きを免れたのだった。
 ずいぶん以前にも特急誘拐された別の知人の話しを以下に書いています。
http://d.hatena.ne.jp/latinos/20090201

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