シャルリ・エブド襲撃事件の現場を訪れる(4)ーなぜイスラエルにすり寄るのか?

鬼子の再登場ー安倍政権の性質
 現在の日本の外交は、安部首相の個人的な資質や願望を抜きにしては、考えられない。これまでの自民党民主党の体たらくが鬼子を産みだしたのである。
 安倍政権というのは、三島由紀夫石原慎太郎の思想の延長にある。軍事的な覇権国家を目指し、国民の自由、報道の自由を縮小し、
臣民としての義務ばかりを鼓舞する、復古主義の政権である。
 その表れとしては、落ち目のソニーから三菱重工へと日本の輸出構造を変換し、軍需品の輸出を核とした経済を打ち立てようとしている。
身分性社会がすでにほぼ確立された今となっては、上層部には優しく、下の臣民には厳しい社会である。それは、新自由主義ネオコンの思想と強く共鳴する。
 オバマとはうまく話が合わなくても、ジョン・マケインラムズフェルド、ポール・ウォルフォウィッツとはそりが良いだろう。安部首相は日本のネオコンとして歴史に刻まれることになる。それは、果たして日本の国益に+と働くのだろうか?

アメリカの横槍で失ったイラン権益

 日本がイランの権益(2004年取得)を失ったのは、2010年のことである。アメリカの強硬な圧力だった。世界最大ともいわれていた、アザデガン油田の権益を75%も取得していたが、ネオコン勢力の強力な横槍により放棄せざるえなくなったのである。
 まさに、日本の戦前からの悲願であったのだが、日本の宗士国が独自外交、とりわけエネルギーにかかわる独自外交はこれ以上許さなかった。しかも、イラン権益は中国にすべて奪われてしまった。(ところが、昨年イランは中国との契約を突然反故にした。まだどの企業が権益を得るのか不明だが、そこにはアメリカへすり寄るイラン外交とともに、何やら密約めいたものさえ、感じられるのである)。

 それもあって、イランからの原油輸入量は急激に低下している。原油の国別輸入比率は、サウジ30.4%、アラブ首長国連邦22.5%、カタール12.8%、イラン4.9%(11年には7.9%)、クウェート7%、オマーン(2.2%)、イラク1.7%となっている。もっと以前はイラン石油は日本の輸入の15%を超えていたものである。
 石油のだぶつきとその価格低下もあって、イランの敵、イスラエルにすり寄っても痛くもかゆくもなくなったわけだ。

株価は安倍首相のアメリカ訪問までは下がらない?
 経済的にイスラエルにすり寄り理由もある。ネタニヤフは大学時代はアメリカで育ち、就職したのは、ボストン・コンサルティングである。当然、ウォール街ユダヤ金融資本とつながっている。安部政権の命は株価である。口にしないまでも、苦境のネタニヤフに手を差し伸べたのは、ゴールドマンサックス、ソロモン・ブラザーズ、などによる日本株買い支えも念頭にある。短期的には以前の政権と比べれば、経済は成功しているといえる。
(ただし、株価を支えるために供給される年金基金は、株価急落後、数年後、もっと早いと2、3年後には大変な苦境に陥っているだろう)。

 当面、株価が上がり、経済もそこそこであるならば、安全保障面、つまり憲法を無視したような政策も国民は容認するというわけだ。それはドイツのヒットラー政権を始め、あらゆる政権、とりわけファシズムが使う手である。
  安部首相はアメリカ訪問をこの春のゴールデンウィークまでに控えているが、それまでは株価が暴落することはないのでは(ただし4月20日前後は危なそうだ)。こうして、日本はアメリカの掌の上で、イランと離反させられ、イスラエルと手を結ぶ道をとったのである。
 さらに現代が第一次世界大戦前夜と酷似していること、、その結果による日本も加担したイスラエル国の建国と中東の分割にまで歴史を遡ると、現政権が目指す日本の権益や、後藤さんや湯川さんの死の意味も、より鮮明に浮かび上がってくる。