シャルリ・エブド襲撃事件の現場を訪れる(5)ー国益とは何か? 

 今の時代が第一次世界大戦前夜と何やら似ており、しかも、イスラエルを建国した4列強のひとつが日本だったことを思い出させるのである。

 もちろん、世界大戦があるというのではない。ヨーロッパはソ連崩壊以来、不安定で局地戦争がいぜん続いている。中東はめちゃくちゃだ。
だが、大国同士が戦うことは、多分ないだろう。アジアに目を向けると、かつての日本のように、新興の強国中国が勃興し、帝国主義時代を思わせる資源外交を展開している。第2次世界大戦の戦勝国は、いぜん、軍事国家である。

第一次世界大戦と日本
 戦争といえば、日本人にとっては第二次世界大戦を思い起こさせ、第一次世界大戦については、私もほとんど知識がない。第一次世界大戦は、主にはドイツ・オーストリアオスマン帝国ブルガリアからなる中央同盟国(同盟国とも称する)と、三国協商を形成していたイギリス・フランス・ロシアを中心とする連合国(協商国とも称する)の2つの陣営に分かれ戦った。日本、イタリア、アメリカ合衆国も後に連合国側に立ち参戦した。

 では、日本は遠いヨーロッパの戦争になぜ参戦したのだろうか。しかも、地中海まで戦艦を送りドイツのUボートと戦い、80名もの犠牲者を出しているのである。
 日英同盟を結んでいた、協商国側も戦争で疲弊していて、日本の参戦が必要だった。それも理由だが、それだけではなく、もちろん、国益あってのことだろう。

 アラブ分割とイスラエル建国は、サイコス・ピコ協定によるものと、学校で教えられたように記憶する。けれどもそれを決定づけたのは、サンレモ会議である。日本は、イギリスの主張に同調する。そして、日本はドイツが所持していた中国山東省の権益や南洋諸島を得ることになる。実はイスラエル国家の産みの親のひとつはかつて列強のひとつ日本だったのである。また、このサンレモ会議は石油を巡る利益の配分でも
あった。

イスラム国にかかわる国益とは? 
 さて、現在に目を転じると、日英同盟に値するのは、日米安保である。けれどもそれは対等ではなく、片務的なものと解釈されている。だから、安倍首相は集団的安保を強力に推し進めようとするのだろう。(けれども、おもいやり予算で沖縄を中心に基地を提供しているのだから、日本が片務だなどと、負い目を感じる必要はない。)戦争に疲弊しているアメリカも、日本に肩代わりしてもらいたいのであろう。アメリカには詩シェールガスがあるのだから、どうしても中東の利益は相対的に低下している。

 では、イスラム国にかかわる日本の国益とは何だろうか。もちろん、第一には石油、第二には戦後復興だろう。国は主にイラク自衛隊を送ったのは、サマーワで、この地域は油田地帯である。2009年サマーナから北東にあるガラフ油田の権益を得たJAPEXは、すでに生産を開始している。さらにかつて日本のイラクへの投資、援助は巨額なものであったことを思いださせる。私の少し前の世代の、ゼネコン、鉄鋼、エンジニアリング会社に属する先輩たちは、大挙してイラクに駐在している。

 このまま、安部政権が続き、株価が上がり続けたとしたなら、国民の批判も少ないであろうから、憲法無視で、さほど遠くない将来に、PKOとは無関係に中近東へ自衛隊を派遣することになる。そして、自衛隊が局地的に戦火を交えるのも遠い未来ではないだろう。自衛隊員の血の代償がイラン権益だ。(すでにイラク派遣で30人近くが自殺しているという)

 けれども、サンレモ会議後の展開を見れば、山東省、太平洋での権益を得たことは、長期的には国益に利するものとはいえないだろう。さらに国益とは何か? と考えると、イラクの権益は多くの日本人には死活的な利益とはいえないだろう。

 むしろ、日本が戦火を交えることで、国際的には日本のイメージは大きく低下する。アメリカ人がほとんど世界中で嫌われるように、日本人である特権ー中国、朝鮮半島以外ではどこでも好意的にみられるーを失ってしまうのだ。

 けれども、日本はマスコミが弱体化したこともあり、安部政権には逆らえずに、歴史をまるで逆行している。そんなときに、イスラム国での人質問題が起こったのである。そして二人が関係していた企業はなんともきな臭いのだ(続く)。