チェルノブイリと福島での小児甲状腺がんの真実

 山下教授が参加した旧ソ連でのフィールド調査の結果をさがしてみた。(筆者は若い時に笹川平和財団から原発被害支援関連で、ベラルーシ行きを打診されたことがある)。
インターネットでアクセス可能だった。チェルノブイリ原発事故被災児の検診成績チェルノブイリ笹川医療協力プロジェクト
1991〜1996より「放射線科学 第42巻第10号−12号(1999年9月−11月)掲載]」(財団法人 笹川記念保健協力財団)
=(http://nippon.zaidan.info/seikabutsu/1999/00198/mokuji.htm
 検診の概要についてはこう述べている。
ウクライナベラルーシロシア連邦の3共和国で、事故による放射能汚染を受けた計5地域(ウクライナ2地域、ベラルーシ2地域、ロシア連邦1地域)をセンターとして
事故当時の児童を対象に検診活動を開始し、1996年4月に当初の5か年計画を終了した。主な検診内容は、被曝放射線量測定、甲状腺検診、血液検査の3項目で、
検診児童数は5センター合計で延べ約16万人に達したが、このうち重複受診者や検診データの不完全な者を除いた約12万人を本報告における解析の対象とした」

       甲状腺検診で発見された甲状腺異常者(地域別、1991-1996)

 









上記の表が健診結果である。甲状腺に異常がある児童は30%を超える。がんは、0.05%で、10万人に50人となる。同研究書にはこう書かれている。

「ここでは甲状腺結節に注目してその発現頻度をまとめてみると、やはり高い放射能汚染地域であるゴメリ州に結節が多くみられることが判明した。
チェルノブイリ周辺では、1000人の子供のうち2〜5人には甲状腺結節が発見されるため、その中にがんがどの程度で含まれているのかが大きな問題となる。
日本や欧米のデータでは小児甲状腺がんは極めてまれで、100万人に対して年間1〜2名といわれているが、その大半は思春期以降で、10歳未満の甲状腺がんをみることはまずない」

「しかし、本プロジェクトを開始した1991年5月には、既に6歳、すなわち事故当時の年齢が1歳以下の小児に頸部リンパ節が腫張した甲状腺がんが発見された。
その後、いかに早く小さな結節をみつけても、がんは周囲のリンパ節に既に転移していることが多く、早期に適切な診断が必要であると同時に、外科治療や術後のアイソトープ治療
の必要性が痛感された」
 参考までに日本の甲状腺がんの年齢別罹患率と比較すると、著しく高い罹患率といっていい。
















 ちなみに、福島の児童(2011年当時0〜18 歳)の甲状腺がんは2017年2月の段階で、145人。対象人数は約381,282人なので、10万人あたり38人である。
他にがんの疑いがある児童が40人いる。人口が多いので当然だが、避難区域ではない郡山、いわき、福島市の順で罹患者が多い(続く)