3号機爆発のデータ欠落の謎

 もうひとつ腑に落ちない情報がある。3月14日午前11時1分3号機が爆発した。1号機(水素爆発 3月12日)の映像とは違う。白い噴煙と黒い噴煙では、爆発の種類が違う。
そう直観したし、そう考えるのが妥当な常識である。専門家は必要ない。核実験を観測するCTBT放射性核種探知観測所が高崎にあることを思い出した。
事務局は外務省傘下の日本国際問題研究所(以前筆者は仕事関係で出入りしていた)にあり、観測所の運用は日本原子力研究開発機構の核不拡散科学技術センターが行っていた。
測定データはウィーンのCTBT準備委員会技術事務局の国際データ・センター(IDC)に送られる。
筆者の手元には当時の高崎観測所の3つのデータがある。
 
3月27日のデータ 捕集日時(3月12日〜3月19日)
セシウム134、テルル132など10数種の放射線各種の放射能濃度の表がある。そのうち、捕集日時3月15日15:55〜3月16日15:55にのみ、ヨウ素135(半減期6.61時間)と
プロメチウム151(半減期28.40時間)の放射能度がある。それぞれ、370000mBq/m3、5000mBq/m3と膨大な量である。
また、希ガスのキセノンは(捕集日 3月15日17:55〜3月16日18:04)は、測定範囲外(大量過ぎて測定できないの意味と思われる)と記載され、3月16日18:04〜22:04は、
停電のため測定不能とあった。15日のデータは3号機の爆発による飛散の影響と推測された。ところが、

5月9日の訂正
15日のデータは誤りだというのである。
ヨウ素135は異常な高濃度の測定地で正しいのかという複数の照会があり、同センター(日本国際問題研究所軍縮・不拡散促進センター)は早速、
日本政府経由でウィーンのCTBT準備委員会技術事務局の国際データ・センター(IDC)に事実関係を紹介しましたが、この度、IDCより、3月15日から16日の
測定結果のうち、ヨウ素-135及びプロメチウム(Pm)151 は、同日に発生した高崎観測所の一定時間の電源喪失等による検地システムの誤認であり、
これらの放射性核種は実際には検知されていないとの回答がありました」

疑念を抱いた筆者は観測所を運用している機関に電話で問い合わせた
すると、「高崎は該当する日に停電で止まっていた訳ではなく、きちんと生データをIDCに送っています」というのである。不可解である。
高崎での計画停電を調べると、「3月16日午前、高崎地域ではじめての計画停電が実施された。9時20分から12時20分の時間帯、約3時間」(高崎新聞)とある。
16日には停電があったのである。けれども少なくとも、キセノン測定不能の時間帯は停電の時間とは合致しない。
 
9月10日 データ
放射線各種の表からヨウ素135は消えている。またキセノンについてはこんな記載がある。
「なお別添の「CTBT高崎観測所が測定した粒子状放射性核種の放射濃度」のテーブルから3月14日〜15日のデータが欠落しているが、これは、3月16日午前〜午後に
かけて発生した高崎地域の計画停電により放射線検出器の冷却システムが停止し、ウィーンのCTBT事務局からの遠隔操作による同システムのリセット・再起動等に
時間がかかり測定できなかったため。17日以降(14日〜15日のデータ以降)は、計画停電の発生に速やかに対応したため、問題発生を回避できるようになった。

 3号機はただの水素爆発とされたままである(続く)。