今も昔も悪ガキは怖いニャン

イラスト BY Sagar Jhiroh

 吾輩は人間と同居して彼等を観察すればするほど、彼等は我儘(わがまま)なものだと断言せざるを得ないようになった。
ことに吾輩が時々同衾(どうきん)する小供のごときに至っては言語同断(ごんごどうだん)である。自分の勝手な時は人を逆さにしたり、
頭へ袋をかぶせたり、抛(ほう)り出したり、へっついの中へ押し込んだりする。しかも吾輩の方で少しでも手出しをしようものなら家内(かない)
総がかりで追い廻して迫害を加える。

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 明治のあの時代も子供は怖かったニャン、でも今の悪さはとてつもなく進化した。刃物、改造エアガン、毒殺、水攻め。
子供ばかりか大人もやる。猫ブームだっていうのに、事実は別のところにある。
 先日、黒とメヤ二が話をしているのをついつい聞いてしまった。なんせ猫の聴覚は人の数倍も何倍もいいのだ。

黒  「先日、ひでぇ男がいたよ」
メヤ二「どうしたんでぇ 黒さんよ」
黒  「おれの首根っこを掴んで、ほら、あの携帯とかいうしろもんで、動画を見せるやからがいた。ほら、見ろ、見ろって」
メヤ二「なにが映ってたんで」
黒  「猫の火あぶりだぁ、バーナーとかいうもんで、おめえそっくりの薄汚いブチ猫が悲鳴をあげて火あぶりだ」
メヤ二「ひぇー、で黒さんはどうしたんで」
黒  「おれは噛みつこうにも、こうやって首根っこをおさえられていたから。でも、そいつがにったり笑った瞬時に、自慢の猫パンチをあごに食らわせて、地面に降りて、
    すたこらさっさと、とんずらって寸法よ」
メヤ二「で、そいつはどんな奴だった」
黒  「若いやつで、スーツを着てネクタイを締めてたな、顔はほっぺが膨らんだふうで、ひひひひって笑うんだよ」
メヤ二「おー、怖ぇー、くわばら、くわばらだ。そんな死に方はしたくねぇもんだ」
黒  「ちげえねぇ」

 黒というのは、公園のみんなより、ちょっと身体が大きくて、ボスを気取っている、黒猫、メヤ二は目のあたりをメヤ二でいつも汚くしている病気猫。
新参者の吾輩はこの2匹にはできるだけ近づかないようにしている。

 吾輩の友達は最近、もっと大きな上野公園から、
「おら、猫のカツレツを食ったが、ほんと節が固くてまずかった、もう食わん」
という何とも凄まじい言葉をきいてここまで逃げてきたボッチ。公園住まいの人間が苦虫をかみつぶすように言っていたそうだ。猫食いは超虐待ニャン。

 あっ、危ない! 

 吾輩の自慢の口髭を切ろうって向かいの床屋が挟みを持って公園できょろきょろしている。
 さっそく木の幹に避難。くわばらくわばら、人間はここまで追って来られない。