疎開とストレスの1

 ▲疎開することによる、将来の健康不安からの解放
 ▲慣れ親しんだ地元から離れることのリスク(生活、経済、仕事、家族)

 福島中通の人々は上記を天秤にかけているのだろう。ぼくは0歳〜9歳までの子どもがいるなら、様々な苦難は考えられるが、だんぜん疎開するほうがよいと考える。

 しかし福島から離れると、「逃げた女」、「逃げた家族」などと後ろ指さされることがあるという。

 本当だろうか? もしそうならば、次のような心理が働いていることになる。

「私はいろんな事情があって逃げることができない。なぜ、あなただけ逃げるんだ。くやしい」
 妬みである。それを「放射能の影響なんかないっていっているよ、なぜ逃げる?」とか「逃げずに放射能と闘うのが本当だ」などと別の言葉で潤色しているのである。

 読者のコメントでも、疎開などだめだ、放射能と闘うのだ、という考えが案外多いようだ。

 子どもがいなければそれでいいだろう。土壌からの放射能除去の努力をして放射能と闘うことも必要だ。

 だが子どもがいると、そうはいかない。前回のブログで登場された大学教授は、次のようにいうが、それは少数意見だろう。

「子どもが影響を受けやすいとはいえません。子どもも大人も同じ元素でできているんです。むしろ子どものほうがDNAは修復するのが早い」

 逆に放射線の影響に詳しい小児科医の山田真さんは、       
「40歳の大人と比べると、0歳〜9歳の子どもの放射線への感受性は4〜10倍です。ですから、子どもたちはみんな疎開してもらいたい」

 つまり、子どもにとって20ミリシーベルト=80ミリ〜200ミリシーベルトに値する。

★100ミリシーベルト以下は科学的に証明されていないは、嘘

 100ミリシーベルト以下の健康への害は科学的に証明されていないというが、それは真っ赤な嘘である。原発村による洗脳である。

 すでに多くの論文が出ており、しかも原発万歳派に属する研究者の多い広島や長崎の人々さえ、低線量の被曝による健康の影響を認めている。

 広島癌セミナーの疫学調査では、広島長崎の放射線の癌への寄与率は固形がんが5〜10mSv=1.8%、100〜200mSv=7.6%、白血病が5-100mSvで5.8%、100mSv〜100mSv=35.7% となっている。

 発がんした100人のうち、固形がんは2名、白血病は6名ぐらいが放射線の影響によるものだ、ということである。

 それに対して、広島がんセミナー理事長 田原 栄一氏は「こんな少ない数値だから100ミリシーベルト以下は、影響はない」というのである。

 つまり、放射線の影響はすでに認知されており、1000人に一人ぐらい癌になってもかまわないと考えるか、あるいは1000人に一人も癌になるなんてひどいと考えるか、その相違によるわけだ。

 机の上に座っている人は、「1000人に一人なんて無視」、臨床医は「大変だ!」という。これはそれぞれの職の違いを考えれば、なるほどと思えるだろう。

 研究者でも、元放射線医学総合研究所主任研究官・医学博士の崎山比早子さんのように、感受性の強い方は次のようにいう。

「癌に関しては100mSv以下が安全とはとてもいえません。ICRPがいうように100mSvで1000人のうち5人癌になるとしたら大変な問題です。しかも日本の研究者は教科書的なことしかいわず、狭い範囲の論文にあたるだけで勉強不足です。チェルノブイリでも子供の甲状腺がん罹患率は実際に上がっていますし、日本の労災にしても原発作業員は低線量被ばくでも認定されています(認定基準は10年間で累積50mSv)」

 では、福島中通の子どものいる家族はどうすればいいのだろうか? (続く)

▲山下さんは、明日福島市で「小児について放射能の影響を考えてみる」そうだが、同じ九州人でも彼はしぶとい。文部省の高木大臣も同じ長崎が地盤だからね、いろいろあるのだろう。でも、どんな発言するか楽しみだね。だれか聞かれた人は教えて。

▲これから、福島三春市に住んでおられる作家の玄侑宗久さんのお話を聞いてきます。