2017-10-11 金持ちの家に生まれ変わると予言したニャン 吾輩は漱石猫である 帰って見ると、奇麗な家(うち)から急に汚ない所へ移ったので、何だか日当りの善い山の上から薄黒い洞窟の中へ入り込んだような心持ちがする。 探険中は、ほかの事に気を奪われて部屋の装飾、襖(ふすま)、障子の具合などには眼も留らなかったが、わが住居(すまい)の下等なるを感ずる と同時に彼のいわゆる月並みが恋しくなる。教師よりもやはり実業家がえらいように思われる。 吾輩も少し変だと思って、例の尻尾に伺いを立てて見たら、その通りその通りと尻尾の先から御宣託(ごせんたく)があった。